寒中お見舞い申し上げます。
1月20日は大寒。暦の上でこれから節分までが最も寒い時期ですね。
けれど、あと2週間を乗り切れば、暦の上では春!
たとえ、気休めだとしても、少しゴールが見えたようで、嬉しくなるのは、私だけでしょうか?
さて、今日の話題は戸隠の竹細工。
講や参拝客がめっきり少なくなる冬の間、
戸隠中社界隈で行われてきた生業といえば、竹細工です。
戸隠へお越しになってお蕎麦を食べた方なら一度は目にしたことがあるでしょう。
根曲がり竹と呼ばれる細い竹を使って編まれた笊やお土産物の様々な竹製品。
水切れがよく、丈夫な笊は、我が家のお勝手でも重宝しています。
戸隠の竹細工の歴史は古く、ルーツは400年以上前にさかのぼります。
伝えるところによると、慶長7年(1602)、大久保石見守の北越巡視の際、
中社の徳武源太左衛門が柏原まで随行した折、
当地住民の生活の資料として、越後街道沿いに豊富に自生する竹を伐採する許しを得、
年貢として竹を納める事になったそうです。
(資料:中社竹細工生産組合「竹細工の話」)
以下は、ノーベル賞作家・川端康成の紀行「牧歌」の中の戸隠を題材にした部分から抜粋です。
「ちょっと小綺麗な土産物といふんぢゃなく、箕だとか、笊だとか、大きな籠だとか、実用的な百姓道具や台所道具が多いでせう。嵩(かさ)張って、手軽に持って帰れやしません、いい加減な郷土芸術や農民美術でないのが、いいですよ。花器なんかも、妙に凝った飾りがない。」
これぞ、戸隠竹細工の本質を突いた名文!
実用的というところがポイントです。
私はいつもこんな籠を車の中に入れてあります。身の回りの物が出し入れしやすく、
スーパーに行けば、「それ使いやすそうでいいねえ」とほめられます。
以前、娘が通う保育園の先生から、大きめの籠を戸隠の竹細工店で買ってくるようにと頼まれたことがあります。
焼き芋をするために掻いた落ち葉の中の砂利をふるうのに具合がいいそうです。
特大サイズの籠は長野新幹線のごみ集めにも使われているとか。
時代の流れとともに、竹細工を営む職人さんの数は減り、現在は20人弱、後継者不足も心配です。
けれど、戸隠そばがある限り、戸隠の竹細工も継承されていってほしい、と心から思うのです。
取材協力:
原山竹細工店、
井上竹細工店、
江戸屋みやげ店