こんにちは。寒冷前線の接近とともに、木枯らしのような風が吹き、落ち葉かきが忙しい戸隠です。
さて、今回は10月24日に行われた第5回戸隠旬ウォーク「鬼女紅葉伝説ゆかりの地をめぐる紅葉ウォーク」のレポートです。
快晴に恵まれたこの日は、県内外から20名のお客さまにご参加いただきました。
集合場所の戸隠商工会館前から、マイクロバスに乗って荒倉キャンプ場へ移動。
今回のガイドは、戸隠登山ガイド組合の秦孝之さん。山岳ガイドのほか、レスキュー隊、レストラン
小鳥の森のオーナー兼シェフとしてマルチに活躍されています。
バスの中で、秦さんから本日のコースや、鬼女紅葉伝説が伝わる柵(しがらみ)地区(戸隠村と合併以前は柵村)のことなどレクチャーがありました。
伝説には鬼女紅葉が隠れた地が「荒倉山」といわれますが、実際に荒倉山という山はなく「荒倉山塊」であり、主峰は砂鉢山(1,431m)と霧見岳(1,400m)とのこと。初めて聴く話に、皆さん興味深く聴き入っていました。
戸隠に伝わる鬼女紅葉伝説については、以前4回にわたって連載しましたので、ご興味のある方は
こちらから。
バスで20分ほど走り、荒倉キャンプ場に到着。このキャンプ場は、長野市への合併前は戸隠村が管理していて、民俗伝習施設の能舞台も整備されました。
しかし、山深い土地にあるため、アクセスが悪く、利用者は大変少なくなっています(今年度から市営ではなくなり、地域の有志が管理)。
この能舞台が賑わうのは年に一度、10月中旬の鬼女紅葉祭り。今年もさまざまな舞台奉納が行われました。
キャンプ場内の色付き始めた紅葉を楽しみながら、ウォーキングの始まりです。
落ち葉が敷き詰められた山道に突如、一茶句碑が。
「鬼の寝た穴よ朝から秋の暮」
文政元年(1818)8月3日、小林一茶が戸隠宝光院で詠んだ句だそうです。
一茶も「鬼が寝た」紅葉の岩屋を訪れたんですね。
しばらく上っていくと、山道に「もみじ」と書かれた赤い鳥居が現れました。紅葉の生活圏だったといわれる地=結界を意識して。
釜背負岩(かましょういわ)と呼ばれる大きな岩。何に見えますか?
よく見ると、サルの横顔のよう...正解は、紅葉の配下として働いたおサルさんが炊事のために釜を背負った姿だそうです。
そして、こちらが紅葉の食事のための煮炊きをしたという釜壇岩(かまだんいわ)。
ガイドさんの案内なしには行かれないような、奥まった場所にある大きな岩。縦横1.5mぐらいの空間があり、ときには獣のネグラとなっていることも!?
お次は舞台岩。
たしかに、踊るにはもってこいの平らな岩。昔の人はうまく名付けたものです。
さらに上っていくと、小さな鳥居の向こうに「紅葉の化粧水」と名付けられた湧き水が流れていました。
都にいた頃はその美しさがもてはやされた紅葉。追われた山の中でも美に気を使っていたのでしょうか。
以前、秦さんが保育園児の遠足のガイドをした際、「この水で顔を洗うと美人になる」といったら顔を洗う子供がいっぱいいたそうです。
冷たくておいしいお水でした。
せせらぎで少し休憩した後、5分ぐらいの登りが続き、いよいよ紅葉の岩屋が見えてきました。
参加者のうちお二方が、肝試しに岩屋の中へ入って記念撮影をされていました。私は入りませんでしたが、岩屋の中は結構広く、
「寝泊まりできそう」とのこと...クマさんと一緒になるかもしれませんね
岩屋の東側の洞窟には紅葉を祀った祠があり、全国各地の能や謡のグループの方が寄進したと思われる卒塔婆が立っていました。
皆さんで記念にパチリ。
岩屋を過ぎたところで、ちょうどお昼になりました。
お弁当を食べるのに、よい場所は....一旦車道へ出たガイドさんが、案内してくれたのは龍虎トンネルの先。
トンネルを抜けると、素晴らしく色付いた山の景色が現れ、歓声が上がりました。
今日のお弁当は
ペンションころぼっくすオリジナルのおにぎり弁当。
たくさん歩いた後の、青空の下で食べるお弁当は最高でした!
エネルギーをチャージして、再び山道を上ります。
まさに今が旬のカエデの紅葉。目が覚めるような色彩に感動
紅葉の岩屋から5分ぐらい上ると、稜線の上に到達!
鬼女紅葉一派を討伐した平維茂郡が勝ちどきをあげた「安堵が峰」と言われる場所です。
晴れていたので、飯縄山がくっきり見えました。
ここから先は稜線上をトラバースして進みます。
戸隠の豊岡方面の絶景を眺めながら10分ほど歩くと、大きな岩に行き当たりました。
岩の下が「松沢トンネル」と呼ばれる切通しになっていて、その前にある看板を詠むと、松沢語一郎氏が指導し、安政年間から慶応3年の7年間かけて人力によって開けた穴だと書かれています。長さ十六間(約29m)、高さ八尺(2.4m)で馬が通りやすいように真ん中を五寸(15cm)下げて掘ったと書かれていました。
年月が経ち、土砂に埋もれ、今では高さ1mほど。腰をかがめなければ通れませんが、振り返ってみたその岩の大きさに目を見張りました
江戸時代から昭和も戦後まで利用され、峠の難所越えに役立ったと言われます。昔の人のご苦労に頭が下がる思いで通過しました。
稜線を抜け、少しずつ山を下ります。紅葉した樹々が西日を受けて輝き、なんともいえない美しさです。
山道から舗装路に行き当たったところで、時計を見た秦さん。
「まだ時間があるので、少し寄り道して行きましょう」
道路を5分程、東へ向って歩いて行くと.....
目の前に現れた戸隠連峰の絶景に、大歓声!
西岳から戸隠表山、高妻山、遠くは妙高山まで、ここまでくっきりとパノラマが見える機会は滅多にないことです。
「本当はあまり教えたくないんだけどね、なかなか来れる場所じゃないのでしっかりと目に焼き付けてください」と秦さん。
「こんなに素晴らしい景色を見せてくれてありがとうございます!」と、お客さまから拍手もおこりました。
しばし絶景を堪能した後は、来た道を引き返します。
目指すは紅葉橋。
「ここからの下りはおととい降った雨のせいで多少ぬかるんでいるかもしれませんので、ゆっくり行きましょう」
秦さんの予想が的中し、日当りの悪い北斜面は、多少どころか、ぐちょぐちょ続き...
写真を撮る余裕もないほどの足下の悪さでした。
靴がいい感じに泥まみれになった頃、前方から「道路が見えたー」という声。
国道36号線との合流点、紅葉橋に到着しました。
ここで、靴の汚れを落としたりしながら、迎えのマイクロバスを待ちました。
参加者のひとりに感想をきくと「正直、こんなに歩くとは思わなかった」という声がきかれました。
神奈川県から参加した彼女は、鬼女紅葉伝説が好きで、鬼無里の史跡は巡ったことがあったので、今度は戸隠に行きたいと思っていた矢先、戸隠観光協会のHPでこのイベントを知ったということでした。
車を使わなければ周遊が難しい今回のコース、もうひとつの難点は、途中にトイレがないということ。
参加者の皆さまにはご不便もおかけしたかと思いますが、長時間歩き抜いていただき、無事出発地に帰着されたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
皆さま、お疲れさまでした!
次回の戸隠旬ウォークはしばらく間をおいて、2015年の3月6日(金)。
スノーシューで冬の戸隠を楽しみます。乞うご期待!