2014年06月27日

手づくりを楽しむ山の暮らし(2)


こんにちは。夏至を過ぎ、そばの花が満開となり、そろそろ葉タバコの花が咲きそうな戸隠です。今年はマイマイガの幼虫が大量発生し、一部の山では笹の花が咲くなど、自然界では節目の年となっているようです。笹の花は約60年周期で開花し、その後笹薮は枯れ、同じ場所には二度と生えて来ないそうです。山で暮らしていると、自然の恩恵とともに、その不思議や厳しさを肌で感じることができます。
ということで、今回は山の恵み、竹にまつわるお話です。

6月のある土曜日、戸隠地区の南端、裾花川の左岸にある炭焼き釜で、竹炭の炭焼きが行われました。

主催者は裾花川右岸の下祖山地区を中心に活動している「下祖山ホタルの会」羽田静男さん。
竹林の間に、ドラム缶でできた炭焼き釜が2つ。10年程前にホタルの会の活動の一環として、長野市の補助金を得て作ったそうです。
過疎化が進む里山の竹林を活用して竹炭をつくり、できた炭はホタルの水路に入れて水質浄化に役立て、地区のバザーで販売することで地域の活性化にもつながればと、地道な活動を続けていらっしゃいます。
年に何度か炭焼きをするそうですが、毎年6月には淡竹の竹の子採りと竹の子汁もセットで楽しめるということで、私も5歳と2歳の子どもを連れて参加させていただきました。
釜の中に50cmほどに切り揃えた竹を並べ、点火してから約3時間、釜の中の温度を80度に保ちます。温度が安定するまでは扇風機や内輪で扇いで火力を強くする作業が欠かせません。

もくもくとよい調子で煙が上ってくると、竹の子汁づくりも始まりました。
まずは、皮剝き。先端から下に向って包丁で切り込みを入れると、簡単に剥くことができます。

次に食べやすい大きさに切ります。

そして洗って鍋に入れ、1回茹でこぼしてアクを抜き、サバ缶(水煮)とともに煮ます。

仕上げに味噌を融けば出来上がり!簡単ですが、この時季しか食べられない、長野ならではの郷土食です。

お汁が出来上がるまでの時間稼ぎ、というわけではありませんが、この日のもうひとつの目的を果たすため、子供を連れてお散歩へ。
炭焼き釜から数百メートル上がったの山の一角に「シンシュウゾウ化石の発掘の地」があるのです。
「貯水池のところに車を停めて、登っていくとお宮があるから、そこを通り過ぎて登って行くとあるよ」といわれ、
勢いで山に入りましたが、特に目印もないので心細く、下の子は怖がって「だっこして〜」....face07
林の陰にそれらしいものが見えたときには、大発見をした気分でしたicon12

褶曲した地層の中に、「シンシュウゾウ下顎化石 1983.11.6〜12.4発掘」と記されています。

発掘したのは当時戸隠小学校の5年生!こんな山の上で、よく発掘したなぁと、感心するばかりです。
ちなみに、現物は戸隠地質化石博物館に展示されているということで、後日見て来ました。

長野県の天然記念物。300万年前の地層だったと知り、改めて感心!

途中で竹の子など取りながら、再び炭焼き釜まで戻ってくると、ちょうどお昼。

アツアツの竹の子汁をいただきました!味噌汁が苦手で普段はあまり食べないお姉ちゃんが、お代わりをして食べたほど、おいしかったです!
(子ども達は竹の子ではなく、サバの身を喜んで食べていましたが)

竹炭の方はこの後3時間ほど加熱して、消火。
一晩冷まして、翌日、釜の蓋を開けてみると....

黒光りした竹炭が現れました!
羽田さんいわく「竹炭同士を重ねたときに、カラカラと締まった音がすれば、上出来」だそう。今回焼き上がった竹炭はとてもいい音がしましたので大成功ということです。



水洗いして炊飯器に入れて炊くのもよし、布袋に入れてお風呂に入れれば遠赤外線効果。トイレや押し入れの脱臭、除湿効果もある万能選手です。

我が家では竹かごに入れて机の上に置いてみると、とてもいい感じ♪散らかっていた机上を整理したくなり、勢いで掃除をしてスッキリicon12これも竹炭の効果かもしれません!




  


Posted by toga at 16:28Comments(0)自然文化郷土料理

2014年06月20日

戸隠旬ウォーク・新緑の池めぐりレポート


こんにちは。梅雨の前半戦はまとまった雨量がない戸隠。お百姓さんたちは空を見上げては畑に出る忙しい時期です。
さて、今回は6月13日(金)に行われた第2回戸隠旬ウォークのレポート。
前日は夜まで荒れ模様で開催も危ぶまれましたが、集まった14名のお客さまが晴れ男・晴れ女のだったのか、無事開催となりました。
本日のガイドは山の庭 タンネの二代目・里野晋吾さん。越水生まれ越水育ち、あるときは料理人、あるときは山岳レスキュー隊員、さわやかな笑顔が印象的なジェントルマンです。

戸隠キャンプ場ウェルカムハウスで顔合わせをし、タンネ特製のお弁当を各自リュックに詰め込み、出発です!

キャンプ場入口南側の駐車場から、念仏池へ。

その昔、高妻山を登った親鸞上人が発見し、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と念仏を唱えるとこれに応えるように池底の砂が噴き上がり、声を低くすれば勢いが弱まることからその名を付けられたという念仏池。
夏が近づくにつれ藻が増えていきますが、非常に透明度が高く、冷たい湧水です。
「みなさんでジャンプしてみましょう」ということで、里野さんの発声で14名+スタッフ3名がドシーン!

池の底から噴き上がる水に、皆さんから感嘆の声が上がりました。
念仏池を後に、一行は県道36号線に沿って種池を目指します。戸隠牧場を通って山側から入るコースも検討していましたが、前夜の雨で足下が悪いということでコース変更。それにしても雨上がりの緑は、一層鮮やかさを増し、目の保養になります。耳にはエゾハルゼミの声がシャワーのように降り注ぎます。

ゆっくり15分ほど歩いて市町村境界の大橋に到着。ここから先は上水内郡信濃町になります。ここから大橋林道を経由した黒姫山登山道(新道)があります。

さらに3分ほどで黒姫西登山道入口に到着。

足下は多少ぬかるんでいますが、登山道はしっかり刈り払いされていて、歩きやすくなっていました。

この道を通るのは一昨年12月の雪乞い祭りのお水取り以来2回目でしたが、雪も寒さもなく、新緑の山を歩くのは本当に清々しいです♪

15分ほどで種池の畔に到着。里野さんから取水口も出口もないのに枯れない池であり、古来この池の水を汲んで雨乞いの神事が行われて来たことが説明されました。種池の主といわれるのが「一かん龍王」で、戸隠神社奥社参道の入口にこの龍王を祀った祠があります。ちなみに毎年6月中旬の巳の日に種池祭が行われ、種池と奥社の祠で祝詞があげられますが、今年は6月16日に行われました。


皆さんが盛んにレンズを向けているのは....?

モリアオガエルの卵が入っている泡巣でしたface08よく見るとかなり高い所の枝にも泡が付いていてビックリ!
既にオタマジャクシもたくさん泳いでいました。

種池は「生態系の豊かさ」を感じる場所でした。たくさんの動植物が共生しているエネルギーに満ちた池です。
丸っこい葉っぱで白い花が咲くヤブデマリ。

お茶で生菓子をいただく時に使うクロモジの若木。


皆さん思い思いに写真撮影を楽しんだり、水分補給をした後、次なる目的地「古池」へ向います。

笹が繁茂する道ですが、よく見ると、小さな花を咲かせた草があります。

ズダヤクシュ。「喘息薬種」と書き、読んで字の如く種子が喘息に効くことからこの名が付いたそうです。
10分ほど歩くと古池に到着!

穏やかな黒姫山と静かな池を前に、「うわ〜きれいー」、「いいところだねー」と皆さんから感嘆の声が上がりました。
古池は農業用のため池として作られた人口池、この辺りも戸隠高原と同様、鉄分が多く含まれる土壌で、水門付近には赤い錆が見られました。

古池の周囲は木道が整備されていて、気持ちよく歩くことができます。

池の西側にある湿地にはミズバショウの群落がありました。残念ながら木道が傷んでいて奥まで入れませんでしたが、アヤメも群生していて、とても眺めのいいところでした。やはりミズバショウの見頃も戸隠より1週間程遅いそうなので、戸隠で見逃した方はどうぞこちらへicon14

ジブリ映画に出て来そうな祠。何をお祀りしているのでしょうか?


木道の両脇には多様な花が咲き、お花が好きな参加者の方は、感激して立ち止まってはパシャリ(私もそのひとり)。
ベニバナイチヤクソウの群落。

レンゲツツジ。戸隠では見頃を過ぎましたが、古池では1週間程遅く見頃になるようです。

ユリ科のナルコユリ(中央の1本立っている茎)。7月頃鳴子のような花を咲かせます。

そして、今回のツアーの目玉でもあったミツガシワの群生地。

例年6月中旬が見頃となるミツガシワですが、今年は開花が1週間程早く、白い花は既に落ち、実だけになっていました。残念icon10

落ち葉の中からニョキっと顔を出しているのはギンリョウソウ。葉緑素はなく、根から養分を摂る腐性植物です。


花を楽しみながら古池を一周して戻ってくると、水面を一列になって泳ぐカルガモの親子に遭遇。意外とスピーディーなので写真では撮れませんでしたが、とても癒される光景でしたicon12
池の畔の芝生の上でランチタイム♪雨雲の動きが活発で不安定な空模様でしたが、お弁当を広げる頃には運良く青空も出てきましたicon01
本日のガイド里野さん自らが作った山菜たっぷりヘルシー弁当!

ウドとシラスのきんぴらに、フキの煮物、メインはノアザミの牛肉巻き。山菜には出汁がよくしみ込んでいて苦みは少なく、とても食べやすく、皆さん「おいしい」といいながら食べていましたface02

静かでゆっくりと時間が流れる古池で、優雅なランチタイムを堪能したところで帰路につきました。
往路も行きと同じ道なのでとても早く感じましたが、足はいい具合に疲れ、普段運動不足の方にとってはよい運動になったようです。

13時半過ぎに戸隠キャンプ場入口に到着。皆さま怪我もなく、楽しんでいただけたようです。
次回は7/25(金)鏡池と不動尊磨崖岩を巡る涼感ウォーキング。戸隠の知られざるパワースポットを訪ねます!
ご興味のある方はぜひお申し込みください。

  


2014年06月13日

戸隠山のてっぺんで。


こんにちは。梅雨空の下、草木が著しく成長する季節となりました。
梅雨の晴れ間には田畑の雑草を刈る刈り払い機の音が鳴り響く季節でもあります。草や害虫と葛藤しながら、大自然の中に住まわせていただいていることを実感する日々です。
さて、去る6月3日、戸隠地区山岳遭難防止対策協議会で、高妻山・戸隠(表)山・黒姫山・飯縄山・西岳の登山道調査を実施されました。学生時代以来10年のブランクがある私でしたが、観光協会に勤めさせていただいている以上は一度は登っておきたいと、意を決して戸隠山の調査に同行させていただきました。

登山道の詳細等について、初めて登った私がレポートをすることはできませんが、大変心に残る経験だったので、記録として残させていただきたいと思います。

戸隠神社奥社からの急登。一気に400メートルぐらい登ります。


道中にはこんな落とし物もあります。猿の糞。踏むと厄介なので要注意!


五十間長屋で最初の休憩

当日は暑くもなく、寒くもない、まずまずの登山日和でしたが、山頂から見えるという富士山や北アルプスは雲に隠れていました。その分、足元に見える戸隠の森の緑が素晴らしく、蟻の塔渡りから振り返って見えた鏡池のきらめきなどが心に刻まれました。

シラネアオイ。庭で咲くものより、色が濃いようでした。

「木曽路はすべて山の中にある」とは島崎藤村の名言ですが、「戸隠はすべて緑の中にある」ということをつくづく感じました。これだけの緑に包まれた、標高の高い土地に、数百年の歴史ある御師集落があり、農村地帯があり、心やさしい人々が暮らしている戸隠。「天空の城ラピュタ」のように奇跡的な場所だなと、戸隠山のてっぺんで、そんなことを思いました。

百間長屋

修験者が窟に籠もり、いろいろな術を身に付けるべく修行した山であることも、これまでは「遠い昔の話」としか思えませんでしが、実際に登ってみるとその跡を見ることもでき、「生の歴史」を感じることができました。



また、山岳レスキュー隊の皆さんの登山者の安全を守るための地道な活動、プロ意識に触れ、大変勉強になりました。

戸隠スキー場のある瑪瑙山方向。


蟻の塔渡り(山頂方向)

蟻の塔渡り(鏡池方向)

登山道入口からの40分の急登、蟻の塔渡りの断崖絶壁は言うまでもなく、九頭龍山から滑滝までは残雪もあり、大変足元が悪い状態でした。また、不動滝・滑滝は「登山道」というイメージからはほど遠く、「ここ通るの?」と疑いたくなるような沢の上を下ります。

八方睨み

日本百名山 高妻山


八方睨みより少々下ったところにある山頂標識。地味な感じなので危うく通り過ぎそうになりました。


九頭龍山山頂。あいにく視界不良でしたが、ここで昼食休憩。おにぎりを食べている間に額をアブに刺されました。


水墨画を見ているような絶景。


一不動避難小屋。宿泊は禁止。急な雨や雷の際にエスケープすることができます。


残雪残る斜面から不動滝へ。ロープを持っていても危険です。


氷清水。まさに「生き返る」おいしさ!。ペットボトルに入れて家に持り帰り、自宅で飲んでも格別においしかったです。


帯岩。鎖が切れていて、補修しながら進みました。後ろ(下)を見ずにカニ歩きです。

危険な箇所を全てクリアして、迎えてくれた二輪草の群生には本当に癒されました。


登山道入口から約6時間。戸隠牧場に到着!

とはいえ、花や景色を愛でる「トレッキング」を楽しむ山ではありません。
登山を検討している方は、必ず「登山計画書」を提出し、戸隠山をよく知っている人と一緒に登ることをお薦めします。
また、終始頭の回りをアブが飛び交い、油断すると刺されますので虫除け対策(ハッカ油がよく効きます!)をお忘れなく。  


Posted by toga at 00:53Comments(0)自然