2013年10月31日

戸隠で蕎麦会席を楽しむ。


こんにちは。朝晩の気温が10℃を下回り、場所によっては霜がおりる時期になりました。
こうなってくると、炬燵が恋しい季節。皆さまのお宅では炬燵を使われていますか?
一年の半分ぐらいが冬ともいえる戸隠では、炬燵を年中出しているお宅もありますが、
我が家では炬燵は戌の日に出すとよいと伝えられ(火難を防ぐとか?)、
次の戌の日(11月4日)にと、計画しております。

さてさて、明日は戸隠そばの新嘗祭、新そば献納祭です。
いよいよ戸隠地区内全てのお蕎麦屋さんやお宿でこの秋採れたての新そばが提供されます。
食欲の秋、今回は長年そばの創作料理を研究されてきたそば会席の宿 鷹明亭辻旅館の女将・辻栄子さんによる蕎麦会席をご紹介いたします。

辻旅館では、長野市内外の方に気軽に蕎麦料理に楽しんでいただこうと、週刊長野新聞社と提携して毎年春と秋に蕎麦会席を楽しむ会を開催しています。なんと、今年で21年目の人気企画。
この日も、長野市内を中心に26名が参加、長野駅前からバスに乗って、柵地区の戸隠地質化石博物館を見学し、荒倉キャンプ場、紅葉の岩屋を経て、正午に辻旅館に到着しました。(私は食事のみ参加させていただきました)

そば会席と聞いて、お膳の前に正座して、一品一品いただく、という改まった食事を想像していましたが、
大広間には椅子席が用意されていて、参加者の皆さんも普段着姿だったので、少し緊張がほぐれました。

先付けは辻旅館オリジナルの“深山大蒜(みやまにんにく)”。小粒でほとんど臭みがなく、醤油の風味とマッチして、ご飯も進みそうな珍味です。

お膳の上に彩り美しく並べられた八寸と小鉢。

八寸は鮎うるかのそばの実添え、鶏いぶし、海老、そば団子、焼き栗。
右の小鉢はカリフラワーと剥蕎麦のブロッコリーソース、
左の小鉢は柿と千成鬼灯(せんなりほうずき)の白和え、柘榴。
どれから食べようか、迷いつつ、一番に箸を運んだのが、こちら。

鬼灯のプチプチとした食感が楽しく、柿の甘み、柘榴の酸味が胡桃入りの白和えに包まれ、口の中でほどよく調和しました!

お次は蕎麦真丈のみたらし餡かけ。

一見すると車麩のようですが、中にはエビとホタテが隠れています(撮る前に食べてしまいましたicon10ごめんなさい)
外はかりっと、中はもっちりした生地にしょっぱめのみたらし餡が絡み、食べ応え十分!大女将さん曰く、この組み合わせの妙は「偶然の産物」だそうです。

蒸し物のお椀を開けると鮮やかな紅葉麩が。蕎麦の実の白蒸と、大鱸(すずき)に韮が添えられています。

お萩風に丸められた餅米と蕎麦の実の下に、鱸が隠れ、洋風の味付けの優しい一品でした。

お凌ぎとして運ばれて来たのは、戸隠小町の蕎麦がき。

戸隠小町はそば粉の名前で、普通のものより、きめが細かいそう。
一口食べて、びっくり!これまでの蕎麦がきの概念を覆す、ふっくらと滑らかな食感。
薬味とかえしの出汁割を付けてあっという間に食べてしまいました。
そば粉と水だけで仕上げているそうですが、これは、上質なそば粉を使ってこそ成せる食感だろうなと、関心してしまいました。

煮物のお椀は蕎麦がんもと大根。ブロッコリーと赤大根の彩りの美しさが目を引きます。

豆腐に蕎麦(麺)とひきじ・人参等が練り込まれ、おろし大根でいただくと美味!
こちらは大女将の思い入れが特に強く、長年かかってようやく辿り着いた一皿ということでした。

温かいものは温かいうちにいただけるのが、会席料理の醍醐味。素晴らしい日本文化ですねface05お料理を待つ間、お客さん同士の会話も弾みます。

お次に運ばれて来たのは....

胡麻豆腐の煎りそば粉揚出汁、舞茸、林檎、青とまとの天麩羅です。
胡麻豆腐はとろける食感で一口で食べてしまいそうでしたが、気をつけて少しずついただくと、後から蕎麦の甘みがふんわりと広がってきました。
とまとの天麩羅は初めてでしたが、ほどよい酸味と食感で、おいしくいただきました。畑に残った青とまとも、こんな活用法があったとは!

本日のお汁は、天然きのこ汁。

なめこ、平茸、栗茸がたっぷり入ったお汁は、この季節ならではの山の恵み。
身体の中からほっと温まりました。

お膳の上に、薬味とつゆが運ばれると、いよいよ戸隠在来種のお蕎麦の登場です。

11月1日の本来なら新そば献納祭後に解禁される新蕎麦ですが、今回はありがたく、特別に提供していただきました。
冷たい水で締められたお蕎麦は本当に喉越しが良く、つるつるとおいしく頂戴しました。

最後に「別腹でお召し上がりください」と運ばれてきたのは、蕎麦のアイスクリーム。

これも絶品!アイスクリームを手掻きしているということで、少しざらっとした食感ですが、後からそばの風味が口中に広がります。原材料はそば粉・煎り蕎麦・生クリーム・卵でのみ。今まで食べた蕎麦ソフトクリームとは別格のおいしさでした。隣の席のご夫人も、「甘いものはあまり食べないけれど、これならおかわりしたい」と話していました。

蕎麦を使った11品のお料理をすべて平らげ、満腹になったところで、
女将の辻栄子さんのご挨拶。

戸隠には昔から蕎麦がきやお煮掛けなど、蕎麦を使ったいろいろな料理があるけれど、
どれも主食のような料理になってしまう、どうしたらよいか、会席という方法で整理してみようと、思い立ち、
創作料理の考案に「燃えて」きたとのこと。

女将さんの努力とアイディアの結晶が詰まった蕎麦会席。
今回ご紹介した内容のお料理は、週刊長野の蕎麦会席の会限定ですが、
辻旅館では一般のお客さまの夕食にも、旬を生かした蕎麦料理をお出ししているということです。

新蕎麦と秋の味覚を楽しみに、ぜひ戸隠へお出かけください。





  


Posted by toga at 15:19Comments(0)戸隠そば

2013年10月25日

戸隠の「そば玉」。

こんにちは。
今週、紅葉のピークを迎えております戸隠高原。
普段は観光客で混み合う鏡池ですが、今朝は嵐の前の静けさ。
霧に包まれながらも、赤や黄色の樹々が池に映り込み、じっと眺めていたいような幻想的な風景でした。
(トップ画像は宝光社から鏡池へ向う林道から)

先週末は紅葉祭り、今週末は信州戸隠トレイルランレース、そして、11月1日は戸隠新そば献納祭と、イベントが目白押しの秋。台風の進路も気になりますが、雨も風も自然の恵み。自然との調和を楽しみながら、秋を満喫したいものです。

自然の恵みといえば、「戸隠そば」もそのひとつ。
来月1日からの新そば祭りに供え、各方面で準備が進められています。

こちらは、新そばが入りましたという目印の「そば玉」。

戸隠の農工商が連携した名物を、ということで、7年前から制作が始まり、
今では戸隠そばのシンボルとして、すっかり定着しました。

新そばを祝う「太鼓」をイメージしたデザインで、竹細工の部分は中社地区の井上竹細工店さんが編み、杉の部分は上祖山地区のやまぐち園芸さんが担当。


竹の切り出しから、杉の加工まで、数週間かけて33個のそば玉が出来上がりました!

完成した「そば玉」は戸隠神社にて祓い清められ、真ん中の丸い輪の部分に「戸隠神社」のお札をぶら下げ、11月1日からは戸隠地区33軒のお蕎麦屋さんの門前に掲げられます。
新そばを食べに来られたら、ぜひこの「そば玉」にも注目してくださいね!
(取材協力:井上竹細工店・やまぐち園芸)  続きを読む


Posted by toga at 13:06Comments(0)文化

2013年10月17日

戸隠の紅葉伝説(その4)


こんにちは。またしばらく更新を休んでいる間に、季節は秋から冬へと一歩踏み出しました。
今日は戸隠山と高妻山がうっすら雪化粧。
外出時にはジャンパーやフリースを、室内でも暖房器具がなければ落ち着かない寒さです。
さて、鬼女紅葉祭りを今週末に控え、今回も鬼女紅葉伝説にちなんだお話を。

こちらは、昨年お届けした紅葉伝説の中でも少しご紹介しましたが、トップ写真の小鳥ケ池からもほど近い場所にある硯石です。

鬼女紅葉の配下で、千里を駈ける女丈夫だったというおまんが、平維茂との戦いに破れて逃走途中に水を飲もうとして立ち寄ったという場所。水面に映った自分のあさましさに我を省みて悟り、以後仏法に帰依したとも伝えられています。

硯石がある場所からは「紅葉の岩屋」がある荒倉山塊を見渡すことができ、
例年10月下旬頃には樹々の紅葉が楽しめる絶景ポイントでもあります。


そして、鬼女紅葉と直接は関係ありませんが、鬼にちなんでもうひとつ。
先日、戸隠山顕光寺時代、代々別当を勤めていた久山家(旧本坊勧修院久山館)で貴重な資料にお目にかかりましたのでご紹介します。
久山家に伝わる「戸隠山物語」です。上下二巻からなるお話で、ご主人によると、文字はおそらく平安時代に書かれ、絵は後世(江戸時代)に加えられたのではないか、ということです。※写真はレプリカ

内容は、信濃の国を荒らしているという鬼を武士が退治に来るというストーリーで、
鬼が女中に化けて武士に酒を盛る展開など、ところどころに鬼女紅葉伝説と重なる部分があります。
しかし、登場する武士は平維茂ではなく、吉備の国の大臣。場所を表す言葉は「信濃の国の国境」だけで、「とがくし」の文字は書かれていないそうです。
現代語訳はないということですが、ふっくらとした平安文字、挿絵の彩色の美しさを垣間見ることができ、感激でした。

山々の紅葉も、もうすぐハイライトを迎えます。
戸隠の短く貴重な秋。五感を充分働かせて楽しみたいものです。  


Posted by toga at 23:41Comments(0)歴史と伝説

2013年10月07日

戸隠の紅葉伝説(その3)


こんにちは。
鏡池の紅葉の問合せが殺到する時期になりました。朝の冷え込みが10℃以下になると色付きが進むといわれています。
今シーズンも例年通り今月中旬からが見頃となりそうです。
さて、紅葉といえば、戸隠で知られるもうひとつの”紅葉狩”。
昨年2回にわたってご紹介した「鬼女紅葉伝説」シリーズの続編をお届けします。

〜鬼女紅葉伝承のあらすじ〜
平安時代の頃、紅葉という高貴な女性が京の都から追放されてきました。穏やかな日々が過ぎて行きましたが、やがて紅葉は他村を荒らし回る生活を始め、鬼女と呼ばれるようになりました。朝廷はその噂を聞き、平維茂に鬼女退治を命じました。維茂は多くの兵を連れ討伐に向いました…神仏に戦勝を祈願した維茂は妖術を操る紅葉を破り、ついに紅葉は征伐されたのでした。
(参考:長野市立博物館「山村に生きた武将たち〜東の真田 西の大日方〜)

鬼女の首を討ち落とした維茂軍でしたが、その首は重すぎて都に持ち帰ることはできなかったため、最初に矢の落ちたところ(現柵神社)に首を埋め、五輪の塔を建てたと伝わっています。
現在その場所は、「鬼の塚」と呼ばれる史跡になっています。


そこから、戸隠化石博物館を経て、権現山万樹林大昌寺へ。

大きな地図で見る

こちらのお寺には鬼女紅葉・平維茂合祀の位牌と、松代藩の絵師・三村養益の描いた「鬼女紅葉退治之図」の掛け軸があります。


掛け軸は普段はお寺で拝観することができますが、現在(10/5〜11/24)、長野市立博物館で開催中の特別展「山村に生きた武将たち~東の真田 西の大日方~」にて展示されています。

※写真は7月に戸隠さんぽ隊で拝観した際のスナップ。
鬼女紅葉の伝承は史実ではないにしても、農村において武士が初めて登場したお話ということで、重要視されています。

美しい女中に化けた鬼達が平維茂らに毒を盛ったと伝わる毒の平(ぶすのたいら)は
現在の荒倉キャンプ場。来る10月20日(日)には第55回「鬼女紅葉まつり」が開催されます。

紅葉の岩屋までのウォーキングも実施予定です。
ご興味のある方は、ぜひお出かけください。
※公共交通機関は通っていませんので、アクセスは自家用車等でお気をつけてお越しください。  


Posted by toga at 13:34Comments(0)歴史と伝説