2014年10月28日
戸隠旬ウォークレポート5・鬼女紅葉伝説縁の地を歩く
こんにちは。寒冷前線の接近とともに、木枯らしのような風が吹き、落ち葉かきが忙しい戸隠です。
さて、今回は10月24日に行われた第5回戸隠旬ウォーク「鬼女紅葉伝説ゆかりの地をめぐる紅葉ウォーク」のレポートです。
快晴に恵まれたこの日は、県内外から20名のお客さまにご参加いただきました。
集合場所の戸隠商工会館前から、マイクロバスに乗って荒倉キャンプ場へ移動。
今回のガイドは、戸隠登山ガイド組合の秦孝之さん。山岳ガイドのほか、レスキュー隊、レストラン小鳥の森のオーナー兼シェフとしてマルチに活躍されています。
バスの中で、秦さんから本日のコースや、鬼女紅葉伝説が伝わる柵(しがらみ)地区(戸隠村と合併以前は柵村)のことなどレクチャーがありました。
伝説には鬼女紅葉が隠れた地が「荒倉山」といわれますが、実際に荒倉山という山はなく「荒倉山塊」であり、主峰は砂鉢山(1,431m)と霧見岳(1,400m)とのこと。初めて聴く話に、皆さん興味深く聴き入っていました。
戸隠に伝わる鬼女紅葉伝説については、以前4回にわたって連載しましたので、ご興味のある方はこちらから。
バスで20分ほど走り、荒倉キャンプ場に到着。このキャンプ場は、長野市への合併前は戸隠村が管理していて、民俗伝習施設の能舞台も整備されました。
しかし、山深い土地にあるため、アクセスが悪く、利用者は大変少なくなっています(今年度から市営ではなくなり、地域の有志が管理)。
この能舞台が賑わうのは年に一度、10月中旬の鬼女紅葉祭り。今年もさまざまな舞台奉納が行われました。

キャンプ場内の色付き始めた紅葉を楽しみながら、ウォーキングの始まりです。

落ち葉が敷き詰められた山道に突如、一茶句碑が。
「鬼の寝た穴よ朝から秋の暮」
文政元年(1818)8月3日、小林一茶が戸隠宝光院で詠んだ句だそうです。
一茶も「鬼が寝た」紅葉の岩屋を訪れたんですね。
しばらく上っていくと、山道に「もみじ」と書かれた赤い鳥居が現れました。紅葉の生活圏だったといわれる地=結界を意識して。
釜背負岩(かましょういわ)と呼ばれる大きな岩。何に見えますか?
よく見ると、サルの横顔のよう...正解は、紅葉の配下として働いたおサルさんが炊事のために釜を背負った姿だそうです。
そして、こちらが紅葉の食事のための煮炊きをしたという釜壇岩(かまだんいわ)。

ガイドさんの案内なしには行かれないような、奥まった場所にある大きな岩。縦横1.5mぐらいの空間があり、ときには獣のネグラとなっていることも!?
お次は舞台岩。
たしかに、踊るにはもってこいの平らな岩。昔の人はうまく名付けたものです。
さらに上っていくと、小さな鳥居の向こうに「紅葉の化粧水」と名付けられた湧き水が流れていました。
都にいた頃はその美しさがもてはやされた紅葉。追われた山の中でも美に気を使っていたのでしょうか。

以前、秦さんが保育園児の遠足のガイドをした際、「この水で顔を洗うと美人になる」といったら顔を洗う子供がいっぱいいたそうです。
冷たくておいしいお水でした。

せせらぎで少し休憩した後、5分ぐらいの登りが続き、いよいよ紅葉の岩屋が見えてきました。
参加者のうちお二方が、肝試しに岩屋の中へ入って記念撮影をされていました。私は入りませんでしたが、岩屋の中は結構広く、
「寝泊まりできそう」とのこと...クマさんと一緒になるかもしれませんね

岩屋の東側の洞窟には紅葉を祀った祠があり、全国各地の能や謡のグループの方が寄進したと思われる卒塔婆が立っていました。
皆さんで記念にパチリ。
岩屋を過ぎたところで、ちょうどお昼になりました。
お弁当を食べるのに、よい場所は....一旦車道へ出たガイドさんが、案内してくれたのは龍虎トンネルの先。
トンネルを抜けると、素晴らしく色付いた山の景色が現れ、歓声が上がりました。
今日のお弁当はペンションころぼっくすオリジナルのおにぎり弁当。
たくさん歩いた後の、青空の下で食べるお弁当は最高でした!
エネルギーをチャージして、再び山道を上ります。
まさに今が旬のカエデの紅葉。目が覚めるような色彩に感動

紅葉の岩屋から5分ぐらい上ると、稜線の上に到達!
鬼女紅葉一派を討伐した平維茂郡が勝ちどきをあげた「安堵が峰」と言われる場所です。
晴れていたので、飯縄山がくっきり見えました。
ここから先は稜線上をトラバースして進みます。
戸隠の豊岡方面の絶景を眺めながら10分ほど歩くと、大きな岩に行き当たりました。
岩の下が「松沢トンネル」と呼ばれる切通しになっていて、その前にある看板を詠むと、松沢語一郎氏が指導し、安政年間から慶応3年の7年間かけて人力によって開けた穴だと書かれています。長さ十六間(約29m)、高さ八尺(2.4m)で馬が通りやすいように真ん中を五寸(15cm)下げて掘ったと書かれていました。
年月が経ち、土砂に埋もれ、今では高さ1mほど。腰をかがめなければ通れませんが、振り返ってみたその岩の大きさに目を見張りました


江戸時代から昭和も戦後まで利用され、峠の難所越えに役立ったと言われます。昔の人のご苦労に頭が下がる思いで通過しました。
稜線を抜け、少しずつ山を下ります。紅葉した樹々が西日を受けて輝き、なんともいえない美しさです。
山道から舗装路に行き当たったところで、時計を見た秦さん。
「まだ時間があるので、少し寄り道して行きましょう」
道路を5分程、東へ向って歩いて行くと.....
目の前に現れた戸隠連峰の絶景に、大歓声!
西岳から戸隠表山、高妻山、遠くは妙高山まで、ここまでくっきりとパノラマが見える機会は滅多にないことです。
「本当はあまり教えたくないんだけどね、なかなか来れる場所じゃないのでしっかりと目に焼き付けてください」と秦さん。
「こんなに素晴らしい景色を見せてくれてありがとうございます!」と、お客さまから拍手もおこりました。
しばし絶景を堪能した後は、来た道を引き返します。
目指すは紅葉橋。
「ここからの下りはおととい降った雨のせいで多少ぬかるんでいるかもしれませんので、ゆっくり行きましょう」
秦さんの予想が的中し、日当りの悪い北斜面は、多少どころか、ぐちょぐちょ続き...
写真を撮る余裕もないほどの足下の悪さでした。

靴がいい感じに泥まみれになった頃、前方から「道路が見えたー」という声。
国道36号線との合流点、紅葉橋に到着しました。
ここで、靴の汚れを落としたりしながら、迎えのマイクロバスを待ちました。
参加者のひとりに感想をきくと「正直、こんなに歩くとは思わなかった」という声がきかれました。
神奈川県から参加した彼女は、鬼女紅葉伝説が好きで、鬼無里の史跡は巡ったことがあったので、今度は戸隠に行きたいと思っていた矢先、戸隠観光協会のHPでこのイベントを知ったということでした。
車を使わなければ周遊が難しい今回のコース、もうひとつの難点は、途中にトイレがないということ。
参加者の皆さまにはご不便もおかけしたかと思いますが、長時間歩き抜いていただき、無事出発地に帰着されたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
皆さま、お疲れさまでした!
次回の戸隠旬ウォークはしばらく間をおいて、2015年の3月6日(金)。
スノーシューで冬の戸隠を楽しみます。乞うご期待!

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2014年10月23日
茅葺き屋根に学ぶ。

こんにちは。紅葉前線は戸隠の山々を下り、標高1200メートル(中社周辺)前後での紅葉が見頃になっています。
久しぶりに好天に恵まれた先週末は、多くのお客さまがピークを迎えた鏡池の紅葉を楽しみにいらっしゃいました

さて、今回はそんな戸隠で現在進行中、茅葺き屋根の修復・葺き替え工事のレポートです。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、平成25年4月より国の歴史まちづくり法に基づく「長野市歴史的風致維持向上計画」において、戸隠中社・宝光社地区が、歴史的風致地区に指定されました。
そして、戸隠の歴史的景観において重要な旧宿坊旅館の茅葺き屋根の整備がこの夏から地区内3ヶ所で行われています。
以前のブログに、宝光社の武井旅館が登場しましたが、今回はその斜向いにある越志旅館の工事の様子を取材させていただきました。
工事前の越志旅館の写真はこちらの記事に。
築250年以上の主屋。約60年ぶりの葺き替えとなる今季は南側(上の写真;左の植木に隠れている部分)で工事が行われています。

私もヘルメットをかぶり、足場を上って工事の様子を見学させていただきました。
茅葺き職人さんは、株式会社小谷屋根の三代目・松澤朋典さん。
11年目ということで、意外にも若く驚きましたが、お祖父さまの代から伝わる技術をしっかりと引き継ぎ、この現場は主におひとりで施工されています。
松澤さんが持っているのが、葺き替える茅の束。長さは約2m、500〜600本の茅が1束になっています。

越志旅館の葺き替え工事は3年計画で行われ、今季の工事では3,600束ほどの茅を使うそうです。
松澤さんいわく、戸隠の茅葺き屋根の特徴として、短い茅を使って継ぎ足し修繕しながら維持してきた歴史があるそうです。
また、茅の葺き替えには大変な労力と費用が必要で、茅場の維持管理を地域で行っていく必要があるのですが、その文化は時代の流れとともに途絶えつつあり、戦後安価に手に入る麦わら等を混入して修繕するようになったということ。
そうなると、茅同士の力が伝わり合わず、傷みやすいそうです。
雨垂れによって茅が濡れ、虫が発生すると、鳥が虫を食べにきてフンを落とし、微生物の分解がおこり、植物が生える...こうなると、屋根はどんどん傷んでしまいます。
実際、今回の修理で古い茅を剥がしていくと、骨組みの柱も傷んでいることがわかり、新しい柱で組み直したということです。
今回使う茅は、従来使われていたものよりだいぶ長く、その分、茅同士が力を伝え合って屋根を支えるため、丈夫で長持ち。
出雲の遷宮と同じで、60年(一代)は必ずもつということです。
「茅葺きは、最高にエコなんです」と松澤さんは言います。
その訳は、60年経っても使える部分は枕材として次の葺き替えに用い、使えなくなった部分は有機肥料として畑に入れ、おいしい有機野菜に生まれ変わる。
そのおいしい野菜を食べて、家族が健康に暮らし、また次世代につながっていくという循環の資材であるということ。
今回剥がした短い茅(上写真の足場の上に並んでいるもの)も、茅を傾斜させる際の枕材として再利用しています。
新たに葺かれた茅は、小谷村から運んできたもの。
小谷村の牧の入地区には、古くから地域の建築資材としての茅を育んできた茅場があり、地域が一帯となって茅場を維持管理する文化が受け継がれてきたのだそうです。その営みが評価され、今年、文化庁の「ふるさと文化財の森」として認定されたということです。

写真:小谷村牧の入地区の茅場(松澤朋典さん提供)
小谷村でも、現在は茅葺きの民家は少なくなり、今回のように、北信地区の文化財級の建物の屋根資材として使われることが多いそうです。
景観を守るために、茅葺き屋根を守るということはすなわち、文化を守るということ。
文化を残したいという地域の人々の強い意思と努力、つながり。戸隠には失われつつある大事なものが小谷村にはありそうです。
茅の厚みはおよそ90cm。
ただ闇雲に茅を積み重ねていくのではなく、最初に建物の形をよく見て分析し、イメージ(設計図)を描くそうです。そして、葺き具合を調整しながら作業を進めます。
茅を手に持ち、みるみるうちに、屋根として葺いていく松澤さん。
その手の早さに、圧倒されました

今月末には茅葺きの工程が終わって足場を外し、鋏を使って仕上げの工程が行われる予定とのこと。
今季の工事が竣工する頃、戸隠に初雪が降るでしょうか。
美しく生まれ変わった屋根を見るのが楽しみです。
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2014年10月10日
歩きながら伝える戸隠の秋の魅力
こんにちは。半月近く更新をさぼってしまいました。この間、樹々の紅葉が進み、刈り取られた稲がはぜ掛けされ、秋そばの刈り入れも始まった戸隠です。
先週に引き続き、今週末も大型台風が接近する予報ということ。
先日(10月8日)の皆既月食を見ながら、「やはり今年は自然が我々人間に何かを知らせてくれる年なのだろうか」などと考えました。
改めて、先月末の御嶽山の噴火で犠牲になった方々のご冥福をお祈りするとともに、一刻も早く、行方不明者が発見されるようにと祈るばかりです。
さて、冒頭から少々重い話になりましたが、気分を変えて、今日はラジオ番組のお話です。
北陸新幹線の長野ー金沢間開業に向けた長野県の広報番組「GO! GO!信州」に戸隠をご紹介いただけるということで、僭越ながら私が戸隠観光協会を代表してインタビューを受けました。
ラジオの収録は初めてで、少々緊張しましたが、インタビュアーの辻深雪さんと戸隠神社奥社参道を歩きながら雑談形式でいろいろお話してきました。
久しぶりに歩く奥社参道は色付いた樹々に木漏れ日が当たる感じがとても美しく、落ち葉を踏みしめる音にも秋の深まりを感じました。

辻さんは妙高市出身ながら奥社を訪れるのは初めてということで、随神門や杉並木の景色にとても感動していらっしゃいました。
今や名物と化した吉永小百合さんCMで登場した杉の木のウロにも大興奮!
人前でしゃべるのが不得意な私ですが、精一杯奥社参道の魅力、今月25日から始まる戸隠そば祭りのPRをさせていただきました。
放送は24日(金)だそうです。よろしければ聴いてみてくださいね

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長野県はSBCラジオ
「情報わんさか GO!GO!ワイド らじ☆カン」内14:20~およそ8分
富山県はKNBラジオ「でるラジ」内 12:50~
石川県はMROラジオ「げつきんワイド おいね☆どいね」内 9:50~
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おまけ。
慣れないラジオ収録のあとは、少しだけ自分へのご褒美を、ということで、戸隠森林植物園を覗いてきました。
真っ赤に染まる前のグラデーションが素敵なモミジ
マユミの実
シオデの実
そして、大好きなカツラの紅葉。
甘い匂いをそのまま懐に入れて持って帰りたい衝動にかられました。
人影はほとんどなく、ひっそりと秋が深まる植物園内は、得も言われぬ色彩の宝庫。
鏡池も素敵ですが、静かに秋を感じたい方に、おすすめします!