2016年03月27日

100年後の戸隠を見据えて。


こんにちは、早朝に起きて書くことが多いこのブログですが、夜明けが早くなり、5時を過ぎればだんだんと東の空の明るさが頼もしく感じられるようになってきました。朝はまだ氷点下に冷え込む日もありますが、早起きの鳥たちのおしゃべりが、季節の移ろいを感じさせてくれます。

そんな3月終わりの週末、戸隠公民館で行われた「戸隠ゆかりの講演会」に参加しました。
講師は、戸隠出身で、人とホスピタリティ研究所代表の高野登さん。
高野さんは、1974年に渡米し、アメリカでホテル・マネジメントの経験を積まれ、1994年にリッツ・カールトンの日本代表として帰国。大阪、東京での開業を成功に導いたリーダーとして有名です。
2009年にホテル業界を退いたあとは、人とホスピタリティ研究所を設立し、各地での講演・研修や、組織の活性化、人材育成などに活躍されています。
故郷戸隠での講演は今回で3回目ということで、前半は高野さんと、戸隠地区住民自治協議会会長、戸隠観光協会会長をパネラーに、参加者の声も取り入れたパネルディスカッション形式で行われました。

写真:右から高野さん、戸隠観光協会極意会長、戸隠地区住民自治協議会新井会長、戸隠公民館西館長

冒頭で高野さんは、こんなエピソードを語ってくれました。
 _大人になって友人を戸隠へ案内し、田園風景の向こうに戸隠連峰が見渡せる場所を車で通過しようとしたところ、「ちょっとまって、ここに車を停めてくれ」と言われた。
友人はその場で40分も動かずに、黙って景色を眺めていた。
彼は言った「おまえは、こんなところに生まれ育って、本当にラッキーだな、こういうところで生まれ育つことが、どんなにラッキーかわかるか」と_


「あなたにとって、戸隠のよさとは何ですか?」
という問題提起に、参加者からは自然の美しさ、戸隠信仰の歴史、そばなど、いろいろな意見が出ました。

そんな声を受けて、高野さんは、
 _戸隠の人は、そばがおいしいというけれど、会津に行っても、福井に行っても、出雲でも、“ここはそばがうまい、ここのそばが一番だ”と言います。

戸隠そばの特異性はどこにあるか、それは、そばを打つ人とその姿勢のよさにあると、私は思います。だからこそ、全国からそば打ちの修業のために戸隠に来るのです。_


また、戸隠には観光資源が豊富だという声に、高野さんは「観光」のことばの意味を投げかけます。
 _観光とはその土地の光を観ること。
では、光とは何か、それは人々の営みの豊かさにあります。
お隣、小布施では観光客とともに若い人の人口が増えている。
栗菓子や北斎の絵のおかげではない、それは、小布施の人々の営み=小布施の人々がつくったガーデンを観に来るためです。

戸隠神社の「式年祭」があるから人を呼ぶのではない。
本来、式年祭というのは人々の営みとしての”祈りの象徴”であり、よその人に魅せるためのお祭りではなかった。_


「戸隠の問題点は?」
という問いかけには、地域ごと、組織ごとに閉鎖的で、連携ができていないという声が最も多く、その他に、地場産業がない、空き家が増えているなどの声もありました。
高野さんは、「壁にぶち当たって限界集落になってからでは遅い。今、ぶつかる前の余力がある状態で、百年先を見据えて考えることが大切」と説きます。

若い世代にこそ聴いてほしい高野さんのメッセージですが、参加者の多くは、年配の方....子連れで参加していたのは我が家だけでしたicon11

そんな年配者への高野さんのアドバイス。
 _”人を動かそうとするのではなく、人は魅力があれば動くもの”。
ここへ集まっている意識の高い人たちが、手を取り合って一歩を踏み出す、ちょっとずつ変えていく練習をしましょう。
初めから大きく変えようとするのは大変だし、皆ついてこない。少しずつ変えていくことが、将来的な変化につながる。
私は人にものを伝えるときには、100回でも1000回でもなく、1万回必要と思うようにしている。
大切なのは、粘り強く続けること。_



住んでいると当たり前に思ってしまうことが、よその人の目で見ると違っていて、自分が戸隠を離れてみて改めてその良さに気が付くもの。
だからこそ、地域おこしには、外から来た人や、一度は戸隠を離れた人の存在が要となるのかもしれません。また、被災地・福島や、国際的な観光都市を目指している金沢など、本気になっている地域での事例から学ぶことも大事だと高野さんは教えてくれました。

ご自身の体験談を交えながらのお話は、機知に富んでいて説得力があり、ずっと聴いていたいような内容でした。
個人的なことを言うと、子どもの相手で途中離席し、しっかりと聴くことができなかったのが、心残りではありましたが...


5年前に嫁として外から来た私にとって、戸隠の自然、文化、暮らしはすべて驚きと発見に満ちています。
そんな発見の一端を、このブログの場を借りて綴らせていただきました。
必然的に、観光客目線というよりも、住民目線となることが多く、”観光協会スタッフブログ”としてこれでよいのかとの葛藤もありました。
とはいえ、2012年8月から今日まで128回の投稿を続けてこられたのも、ひとえに詠んでくださった皆さまのおかげさまと感謝しております。
諸事情により、「戸隠ノート」としての発信は今回が最終回となります。
これまで私の拙い文章にお付き合いいただいた皆さま、どうもありがとうございました!
そして、これからも、戸隠を温かい目で見守っていただきますよう、お願い致します!

  


Posted by toga at 13:38Comments(1)文化戸隠人

2015年10月21日

秋の夜長の 戸隠夜祭り


こんにちは。日中は残暑といえるような陽気が続いていますが、朝晩の冷え込みと日の短かさに、秋の深まりを感じる戸隠です。
そろそろちゃんと冬物を出して冬支度をしなければと思いつつ...。

さて、今回は、10月17日(土)に戸隠神社中社大鳥居前広庭で行われた「戸隠夜祭り」のレポートです。
今年2回目となるこのお祭り。観光のピークを過ぎたこの時期に、
「地域の皆さんに楽しんでいただきたい」
「子供たちには戸隠の伝統と良さを伝えたい」
「観光客の皆さまには戸隠を知ってもらいたい」
そして、戸隠の魅力を再発見していただこうとの思いから、地元の若手有志「戸隠再考プロジェクト」の皆さんが企画したものです。
当日は穏やかな天気で、心配だった冷え込みもなく、地区内外から多くの参加者が集まりました。

戸隠の子供たちによる獅子舞が披露された後、カウントダウンで三本杉がライトアップされると、大きな歓声が上がりました。

ペットボトルを再利用したキャンドルホルダーが、中社参道の石段を幻像的に照らします。

このお祭りに協賛している会社やお店の燭台にも火が灯されました。




子供のためのヨーヨー釣りは、なんと、無料!


輪投げ、的あて、パチンコなど昔懐かしい遊びができるコーナーも。

ヨーヨー釣りの棒、輪なげの輪、弓矢、そして参加賞のお菓子が入っている籠も、すべて戸隠の伝統工芸・根曲がり竹細工です!icon12



先端にコルクが付いた竹の矢でダンボールに描かれたどんぐりとりんごの的を当てる的あて。
ちなみに、係のお兄さんが子供のころは、尖った石を付けて、木に刺さるようにしていたそうです。ワイルドですね〜face02


子供たちは手作りの遊び道具のよさを、感じたでしょうか?
昔子どもだった人たちが、童心に戻って遊ぶ姿もありました。


屋台には、戸隠や信州の特産物を使った手作りのおいしいものがたくさん!
地場産のじゃがいもをその場で揚げてくれる、ポテトチップス。

戸隠のそば粉をすいとんにして豚汁風味でいただくそばすいとん。

地元のケーキ屋さんによる手作りそばクレープは、子供達を中心に大人気icon14


振る舞い酒に、振る舞いジュース。


そして、希望者によるお餅つきと、お餅の振る舞いも大盛況!

さらに最後には、豪華景品が当たるじゃんけん大会も行われ、戸隠人のパワーと大盤振る舞いのサービスで、心温まる夜の時間になりました。

何より、三本杉の下で楽しそうに遊ぶ子供達の笑顔が心に残りました。

関係者の皆さま、お疲れさまでした!
今回来られなかった遠方の方も、ぜひ来年はお出かけくださいませ。


  


Posted by toga at 09:01Comments(0)イベント戸隠神社戸隠人

2015年10月07日

戸隠で紅葉散歩。


こんにちは。朝晩の冷え込みが強くなり、寒暖差に比例するように山の樹々が暖かな装いになってきました。
常緑樹といわれるスギやマキなども、この時期は葉先が黄色っぽく黄葉します(山で暮らす前は知らなかったことface06)。
万葉の色がきらめく、よい季節です。
とはいえ、気まぐれな秋の空は陽が差したり、曇ったり。紅葉シーズンの中でもベストコンディションと言える日(瞬間)は実際にはごくわずか。
地元にいれば何度もチャンスがありますが、遠方から見える方にとってはちょっとした「運試し」ともいえるでしょうicon01

鏡池はいうまでもなく戸隠きっての紅葉名所ですが、大変混んでいることでも有名(10月の土日祝日はマイカー規制もあります)。
ということで、今回は今秋観光協会のポスターを飾った小鳥が池を訪れてみました。
戸隠神社中社から歩いて10分ほど。この道標が目印です。

道路から少し離れただけで、静寂に包まれます。ときおり聞こえる、どんぐりが枯葉の上に落ちるときの「パチン」という音も楽しみながら。

この日は、雲が多く、戸隠連峰はほとんど雲の中でしたが、池の周囲の樹々が水面に映り込む景色は、いつ見ても心を打たれます。


アキノキリンソウの蜜を吸うチョウの姿も。

あと一月もすれば高原にはチョウではなく、雪が舞う時期になります。

散策のあとのお楽しみは.....小鳥が池から一番近いこちらのお店はいかがでしょう?

戸隠の自然をこよなく愛し、登山ガイドも勤めるオーナーの秦孝之さんが営むレストラン小鳥の森です。
お店の人気メニューのひとつ、「岩魚と高原野菜の和風パスタ」は、旬の野菜(この日はきのこも)がたっぷり入り、食べ応えも十分!

これからの時期は、まきストーブの温もりに包まれて、周囲の紅葉を愛でながら食事やお茶を楽しめますface05

また、10月30日(金)には、秦さんのガイドで鬼女紅葉伝説ゆかりの地を巡る戸隠旬ウォークが行われます。
秋たけなわの戸隠へ、ぜひお出かけください!






  


Posted by toga at 10:36Comments(1)戸隠人

2015年09月24日

戸隠連峰の麓で秋を味わう


こんにちは。9月に入ってから日照時間が少なく、作物への影響も心配されていましたが、シルバーウィークはお天気に恵まれ、ツタウルシやオオヤマザクラなどなどが色づき始めましたicon14
紅葉を楽しみに山行を計画している方もいらっしゃるでしょう(私もそのひとり)。
そして、もうひとのお楽しみは、旬の味覚・きのこ。
そば処の戸隠では、この時期、多くのお店できのこをメインにしたおそばが供されます。
ということで、今回は日本百名山高妻山の登山口、戸隠牧場入り口の老舗・手打ちそば岳(がく)を訪れました。

ログハウスの店舗は、新しいお店のようですが、創業は昭和27年。3代目の曽根原公夫さんが15年程前に建て替え、昨シーズンからは息子さんで、プロスキーヤーの曽根原功さんを迎えて親子で営まれています。

木の香り漂う店内でまず目につくのが、この書。

そして、店内のお品書きやメニューも全て手描き。イラストも精密で味があります。

なんと、すべて功さんが描いたものだそうです!icon12

おすすめは「きのこそば」ということで、迷わず注文致しました。
そばを待っている間に、「天然きのこの前菜プレート」をいただきます。

左から、カラマツだけのゆずこしょうおろし、天然きのこのみそ漬け、アイシメジの炙り焼きこがし醤油がけ(天然きのこは採集状況によって変わります)。
きのこのみそ漬けは、初めて食べましたが、きのこのコリコリした食感が残って旨い!酒の肴にも合いそう....face03

そして、湯気をまとっておそばが運ばれてきました。

麺が見えないほどのきのこのボリュームに驚きつつも、「冷めないうちに」ということで、つるっといただきました。
かつおときのこの出しに、太めに切られた麺、そしてきのこのぬめり感が絶妙に絡み、口の中にはそばの甘みが広がります。
取材した日はストーブを焚くほどの肌寒い日でしたが、食べているうちにお腹の中からほかほかと温まりました。

いつもはざるそばしか食べないお客様でも、この時季だけは温かいきのこそばを注文する人が多いとか。
「温かいそばは、そばの甘みを味わうことができる」と話すご主人。

きのこは毎朝ご主人自らが、お店を開ける前に山で採ってくるそうです。
「毎朝ですか!?」と驚くと、「採れる日と採れない日があるから、店で出すには毎日入らなければ間に合わないよ」と笑って返されました。
きのこ採りは子どもの頃から親について山へ入り、自然に覚えたそうです。
山で暮らす人にとって、きのこは身近な食べもの。その呼び方にも愛称があります。
たとえば、アイシメジは「きんたけしめじ」、ナラタケは「もたし」、カラマツダケは「はないぐち」など...。
これからの時季はクリタケなどが採れるそうです。

お店には、日本酒のメニューも充実しています。

以前は1種類しか出していなかったそうですが、功さんがお店を手伝うようになってから戸隠ならではのお酒を、ということで戸隠雪中酒やそば焼酎玄などを揃え始めたところ、お客様にも好評とのこと。キャンプをしに来た人がお昼に飲んでいくパターンも多いそうです。

そして、功さんセレクトのお薦めのお酒はこちら。

なんと、戸隠で栽培された酒米を使った初めてのお酒!
「幻舞」で有名な川中島の酒千蔵野で醸されたということで、その名も「戸隠の舞」。そして、ラベルデザインは功さんの作品です。
酒米を栽培したのは戸隠豊岡にある山口ファームの山口皓(ひかる)さん。戸隠にも地酒がほしい…という思いから始まり、中社の越後屋酒店や戸隠の農業を担う関係者の間で2年前から準備を始め、平成26年に厳しい等級試験に見事合格したとのこと。原料栽培から商品化までまさに戸隠オリジナル!戸隠人の熱い心がこもったお酒です。

戸隠の舞(生酒)は、手打ちそば岳、戸隠神社宿坊いろりのそば処築山館等でいただけるほか、中社の越後屋酒店で購入することもできます。
また、おみやげ処宝泉戸隠そば山口屋では、火入れをしてより日持ちする「戸隠の舞」を販売しています。
いづれも、数量限定ですので、気になる方はぜひお早めにお出かけください!

紅葉とそば、きのこ、そしてお酒。
ますます楽しみが広がる戸隠の秋です。






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Posted by toga at 16:21Comments(0)戸隠人戸隠そば

2015年09月11日

戸隠人と出逢う旅


こんにちは。草花に朝露が降り、チロチロと秋の虫の音が絶え間なく聞こえてきます。
昨夜は戸隠地区でも土砂災害警報が出ましたが、大きな被害はなかった様子。
台風18号の被害に遭われた方々の苦しみが一刻も早く癒されるようにと願うとともに、改めて、大いなる自然のなかにある自分の小ささを感じることで、今生かされていることに感謝する朝です。

さて、先週末は戸隠の地域活性化をねらいとして、あるイベントが行われました。
長野市商工会戸隠支所青年部主催の「戸隠婚活2015〜戸隠出逢い旅」。
戸隠で初の試みとあって、どんな様子か野次馬半分で取材して参りました。

募集定員20名に対し、男性(戸隠に在住していることが条件)19名、女性13名が集まった土曜日の昼下がり。
まずは、戸隠豊岡地区にある山口ファームにて野菜の収穫体験から。


珍しい紫色のシシトウや

切り口がハートや星型になるキュウリも!face05

畑でもぎたてのトマトのおいしさも体験していただき、つかみはOK!

収穫した野菜は夜のバーベキューでいただきます。

その後、女性陣は中社の宮澤旅館にチェックイン。

代々宿坊として継がれてきた古い旅館ですが、若旦那と若女将の気配りとお料理が評判のお宿です。
荷物を下ろして少し落ち着いたところで、今回のメインイベント、バーベキューのため戸隠キャンプ場へ移動。

野菜と同じく、バーベキューで焼く魚も自らつかむ!
ということで、戸隠牧場内のせせらぎに放たれた岩魚をつかみどりをするという企画。
夕暮れが迫り、霧も降りてきた中で、男性陣は力の見せ所です!?

男性だけでなく女性が挑戦する姿もあり、皆さん少年少女にかえったようでほほえましい光景でしたface02

「婚活」と聞くと、ちょっと構えてしまいそうですが、今回取材をしていて、参加している方々が意外にも気負わない雰囲気だったことに驚きました。
商工会の青年部の方のお話によると、今回の旅は「戸隠で土地の人と出逢い、仲間をつくり、また戸隠へ来てもらうきっかけをつくること」が最大の目的で、結婚を約束するものでも、前提としてだれかと付き合えというものではないとのこと。参加者の方にもその主旨がしっかりと伝わっていたようです。

参加者の女性のひとりにお話をきくと、数年前に戸隠へ来て、深い自然にとても癒されたので、また行きたいと思っていたところ、ネット検索でたまたまこのツアーを見つけ、料金の安さと、ひとり旅ではできないことができそうだと思い、参加を決めたそうです。参加者の女性同士でも仲良くなれそうな人がいてよかったと話していました。

取材したのは2日間の行程のほんの一部でしたが、その中でも商工会青年部のスタッフの方々の細やかな心配りと綿密な連携体制が垣間見られ、参加した女性達にも、その心意気は充分に伝わったことでしょう。

戸隠人たちの真心溢れるおもてなしの下、参加者同士の交流は深夜までつづき....

翌日は戸隠神社への参拝と、戸隠森林植物園の散策、そば打ち体験も行ったそうです。

そして、嬉しいことに何組かのカップルが成立したとのことicon12
今回の出逢いをタネとして芽生えたものが、人の輪として広がり、戸隠という森がますます豊かになりますように。








  


Posted by toga at 14:20Comments(0)イベント戸隠人

2015年08月24日

戸隠旬ウォーク〜スキー場トレッキング〜


こんにちは。子どもたちの夏休みが終わり、早いところでは秋そばの花が見頃となり、戸隠に秋がやって来ました。
秋雨前線の影響で、雲の多い今日この頃。8月21日(金)に行われた戸隠旬ウォークも、雨具を着てのウォーキングとなりました。icon03
今回のガイドは戸隠小舎のご主人、佐々木常念さん。

冬はSIA デモンストレーターとしてスキー界で活躍され、夏はガイドや山岳救助のお仕事もされているマルチタレント的な戸隠人です。
今回は「瑪瑙山絶景トレッキング」と題し、戸隠スキー場越水ゲレンデから瑪瑙山の山頂を目指す予定でしたが、残念ながら瑪瑙山も、戸隠山も霧の下.....icon11
ガイドさんの判断で、ガスに巻かれる危険の少ない怪無山を登り、中社ゲレンデ方面へ下りるコースに変更することになりました。
「こんなお天気の日ほど、笑顔でいきましょう!」という明るいかけ声とともに、出発!
ゲストハウス岩戸の横からゲレンデへ。

この辺りの標高は1310M。ススキやイタドリなどが成長して花開き、すっかり秋の様相のゲレンデです。
晴れていれば、戸隠連峰のパノラマが見える場所ですが、神坐す山は毎日見えるわけではないからこそ、神秘的でありがたい存在なのかもしれませんicon12

夏にしか見る事のできない貯水池。スキー場の雪が足りない時はこの貯水池の水を利用するそうです。

第4ペアリフトの終点を左手に見ながら緩やかな斜面を登ります。
冬には多くのスキーヤーで賑わうcafeやなぎらんの近くまで来ると、その名の由来でもあるヤナギランの群生を発見!

ゲレンデの下とは150Mほどの標高差があるので、夏の花とはいえ、まだ楽しむことができました。
そして、右側に進路をとり、林間コースへ。
ダケカンバの大木の前でシラカバとの違いを説明していただきました。ダケカンバはシラカバよりも高標高の地に生え、枝の先まで乳白色の樹皮で覆われています。シラカバは樹皮は白だけれど枝の先端は黒いとのこと。知らなかった〜!face08

ダケカンバの林を抜けると、怪無山の頂上(1549M)もすぐそこですが、だいぶガスも出ているため、頂上には行かず、「どんどん滝コース」を下ることに。

かつては滝があったのでしょうが、今はない「どんどん滝」コース。白樺の樹林帯に、クマザサとチシマザサ(根曲がり竹)が繁茂する登山道です。

雨なので鳥や蝶の姿もなく、静かな森を黙々と下りる一行。アブやハチなどに刺される恐れがないのがラッキーでした。

飯縄登山道との分岐点を過ぎると、右手にせせらぎが現れました。
「小川の小径」と言われる遊歩道。地区で独自の水道を持つ戸隠中社区の水源となる川です。

冷たく清らかな清流の脇には秋の風物詩・オオシラヒゲソウ(手前の白い花)が咲いていました。

小川の小径から中社ゲレンデへ。

中社区の水道施設に入る水を分ける分水嶺も見ることができました。

ヤマトリカブト(キンポウゲ科)

トチバニンジン(ウコギ科)

参加者の中に漢方薬の調剤をしている薬剤師さんがいらして、生薬の材料として用いるこの2つの草花に出会えた事をとても喜んでいらっしゃいましたface05
中社ゲレンデを横切り、中社区の路地から横大門通りへ。

国の登録有形文化財にも指定されている宿坊極意(徳善院)に寄り道。

善光寺地震で倒壊した一ノ鳥居の石柱。

そして、それを運んだ修羅(そり)。建築に使う石材や木材を、雪のある時期に運び、負担を軽くしたという雪国ならではの知恵です。


霧の下の越水ゲレンデをスタートして約2時間。終点の戸隠神社中社大鳥居前に到着!

悪天候にもめげずに歩き抜いた10名の皆さま、おつかれさまでした!
ゴールする頃には雨が上がって空が明るくなり......雨男・雨女はだれだ?なんて話で盛り上がりましたface03
この後、大鳥居の向かい側にある戸隠観光情報センターの無料休憩所にてお弁当をいただきました。

ロッヂぴこさんの鯖缶入りばら寿司弁当は、歩いた後の体に沁みるおいしさicon12


次回の旬ウォークは9月18(金)戸隠連峰の絶景リベンジなるか!?
皆さまのご参加お待ちしております!






  


2015年05月01日

戸隠の桜守と五地蔵桜


こんにちは。五月晴れという言葉がよく似合う五月のはじめ。日中は真夏のような日差しが照りますが、吹く風は爽やかな戸隠です。
さて、今回は桜にまつわるいいお話を。
晴天に恵まれた4月29日(みどりの日)、戸隠大山桜プロジェクト実行委員会主催の桜の植樹会が戸隠牧場で行われました。
このプロジェクトについては昨年の4月にもご紹介しました(「戸隠が大山桜の名所に!?」)が、今回の主役は植樹する若木(7年目)の親木である大山桜の古木(推定樹齢250年)です。
プロジェクトの発起人である桜守、山の庭のタンネの里野龍平さんは、数年前から戸隠での植樹を進める一方で、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市の大川小学校に犠牲になった子供や先生の供養のために、犠牲者の人数の分の植樹を続けてきました。
震災から4年、被災地にはまだまだ被害の爪跡が残されているとききますが、今回、御礼ということで石巻の方から宮城県産の石が送られ、親木である戸隠牧場の古木に命名の碑が建てられることになったのです。
里野さんがこの樹に名付けた名前は、「五地蔵桜」。

そして、宮城県の大蔵山スタジオ(株)から送られた伊達冠石(だてかんむりいし)に戸隠豊岡の法雨庵庵主駒澤たん道氏の筆が立派に刻まれ、古木の前に建てられました。

この日は桜を通した被災地と戸隠との深い交流を記念し、プロジェクト関係者や、石碑制作・寄贈者の山田社長、植樹会の参加者等30名程が集まり、臨済宗の僧侶である駒澤氏が石碑の前でお魂入れの法要を行いました。


宮城県の大蔵山のみで採石されるという伊達冠石(安山岩)は、自然石の形状で採石される大変貴重な石とのこと。
今回の石碑建立の経緯の説明を受けた寄贈者は戸隠の自然をイメージしながらやわらかくあたたかみを持った石碑になるようにと心を込めて加工したそうです。

五地蔵桜の名前の由来について、里野さん(写真中央)は「五地蔵山(上の写真で桜の真後ろにピークがある山)の麓にある樹であり、山伏の修行の地だった戸隠の象徴であり、長い歴史の中で、戸隠連峰で命を落とされた方々への供養の意味もある」と話されました。

また、通例、戸隠で行われるお祭等は戸隠神社の神事がつきものですが、この日は仏事でした。駒澤氏は天台宗での資格もお持ちで、この日、最初に詠まれた経文は天台宗のものでした。つまり、廃仏希釈の歴史を経て、150年ぶりに天台宗のお経が詠まれたということ。戸隠信仰の歴史に思いを馳せるのにも最高のスポットとなりそうです。

その後、牧場とキャンプ場の間の草地に設けられた植樹場所にて、県内外から募ったオーナーの皆さんにより、大山桜の植樹が行われました。
地元戸隠の方から遠くは静岡県の方まで、幅広い世代の方が思い思いに桜を植え、清清しい休日のひとときとなりました。

五地蔵桜の見頃は例年5月中旬頃です。お楽しみに。  続きを読む


Posted by toga at 11:01Comments(0)戸隠人

2015年04月13日

戸隠カフェに新風ひらり。


こんにちは、温かだった週末から一転、昨日はみぞれが降り、タイヤを履き替えた戸隠人たちをハラハラさせました。
とはいえ、花々が咲き、新緑が芽生える季節はすぐそこまで来ています。お天道様のパワーに、期待しますicon01

4月26日からの戸隠神社式年大祭を控え、冬の間休業していたお店も、続々とオープンし始めました。
ということで、今回は戸隠古道の玄関口、一之鳥居苑地からもほど近いCafe Cembalo(カフェチェンバロ)さんを訪れました。

「歩み入る者にやすらぎを 去り行く人にしあわせを」
をモットーに、オーナーの神倉さんご夫妻が自然豊かな戸隠の地で生活する手段としてカフェを開いたのは1977年。
今でこそ定着した「カフェ」という言葉ですが、戸隠にはそば屋以外の飲食店がなかった時代のこと。
アメリカから輸入されたというログハウスの店舗は、当時はハイカラと思われたことでしょう。


「みえない力に導かれてここまできた」と振り返る神倉恵子さんですが、子育てをしながら、出会いや別れを積み重ねたカフェは、オーナーの思いのとおり、初めて入っても温かさと安らぎを感じられる素敵な空間です。


今シーズンのチェンバロは、新鋭シェフの白石翔士さんが腕を奮っています。

フランスでパティシエの修行をされ、帰国後は神倉さんの息子さんが名古屋で営むレストランブラッセリーブルゴーニュで経験を積まれたという白石さん。まだお若いですが、大変落ち着いた物腰で、料理のセンスもよく、お客様にも好評だそうですicon12

コンセプトは「身体に優しいナチュラル素材のスイーツや料理と香り高いお飲みものを バロック音楽の流れる空間で」
飯綱高原の麓で無農薬の野菜を作られている農家さんから仕入れた新鮮な野菜を使ったパスタ、ブルゴーニュ仕立ての天然酵母のフォカッチャ、スイーツにお飲み物がセットになったランチがお楽しみいただけます。

また、これからの季節、山菜や旬の野菜を使ったキッシュなどのメニューも準備中だそうです。

チェンバロの人気メニュー、メレンゲとアイスクリームのエスプレッソ風味(お飲物とセットで864円)をいただきました。

縦に切っていただくと、エスプレッソの香りとバニラアイスの甘さ、さくさくのメレンゲが一度に楽しめて、全部食べてしまうのがもったいないくらいface05添えられたイチゴの爽やかな演出も絶妙です!

コンサートや詩の朗読会など、これまで数々の著名人を招いてのイベントも催されてきたチェンバロ。
今シーズンもお楽しみの企画があるそうです。4月18日(土)はスウェーデン風パンケーキの講習会と山中和子さんのピアノ演奏会♪
ご予約お問合せはカフェチェンバロ(090-7245-3450)まで。

七年に一度のお参りの後に、ぜひくつろぎの時間をお過ごしください。




  


Posted by toga at 16:08Comments(0)戸隠人カフェ

2015年03月25日

戸隠人の手仕事きらり。


こんにちは。今朝は雉子の鳴き声で目を覚ましました。いよいよ野鳥達の繁殖期。庭にはキビタキやセグロセキレイの姿も。外に出るのが楽しみになってきました。とはいえ、彼岸を過ぎてまた寒が戻った戸隠。大人も子どもも体調管理に気をつけなければならない年度末です。

さて、今日は信州戸隠そばの実にて現在開催中の『戸隠人の手仕事』展のご紹介です。
陶芸家、染織家、織物作家....戸隠にはさまざまなアーティストが暮らしていますが、地区内でその作品に見たり触れたりする機会は少ないもの。
そばの実の二代目、徳武祐介さんの発案で今回はジャンルを超えて11人の作家の作品が集められました。

楠田美重子さんのホームスパン(羊毛を手で紡いで手織りした布)。


加藤由美子さんのワラの篭。


富永楓さんの草木染めの羊毛。ストール、ブローチ、セーターなど。


小山智徳さんの織部焼。


柳澤幸江さんの天然石 スピリチュアルアクセサリー。


登山ガイドでもある酒井敬子さんの山葡萄の篭。


Woodpeckerの根曲がり竹ボールペン。

戸隠竹細工の製作中に出た廃材を有効利用したボールペンの制作は、徳武祐介さん。
竹の個性を活かした形は、持ちやすく、書き心地も◎です。

手仕事の温もりと色彩あふれる作品を目で堪能したあとは、舌でも。

妙高山の雪融け水で育った甘味のあるゆきエビが贅沢に使われたゆきエビのかき揚げ。美味ですicon12

ここにご紹介したのは作品の一例ですが、ほかにも多数の作品が展示・販売されています。
作品展は3月31日まで。ご興味のある方はぜひ足をお運びください。
  


Posted by toga at 10:59Comments(0)文化戸隠人戸隠そば

2015年03月07日

戸隠の未来を語る。


こんにちは。少し温かくなったと思って薄着をすれば、翌朝は再び氷点下の冷え込みになったり、春の足音が聴こえてくるこの季節はそわそわと落ち着かない時期です。そもそも、年度末ですしね。
いよいよ、3月14日には北陸新幹線が金沢駅まで開業icon124月5日からは善光寺御開帳、戸隠では4月26日から一ヶ月間、戸隠神社の式年大祭が行われます。
雪融けを待たず、戸隠をお参りいただくお客様へのおもてなしの準備が始まります。

そんな動きの中で、戸隠人が集う2つの会に参加しました。
まずは、戸隠中社・宝光社地区まちづくり協議会が主催した戸隠まちづくりシンポジウム2015。

以前のブログでも紹介しましたが、長野市の歴史的風致地区に指定され、伝統的建造物群保存地区とし今後、町並みの整備がされていく戸隠。地域の皆さんの関心も高く、会場の中社公会堂には女性を含めて多勢の姿がありました。


この日のメインは先進地区として京都府南丹市美山町から「北村かやぶきの里保存会」の中野貞一さんをお招きしての講演会でした。

日本の原風景と呼ばれる田んぼに囲まれた茅葺き屋根の北村地区。その昔は林業王国といわれ、農林業で成り立っていた北村は昭和40年代以降、過疎化、少子高齢化により衰退し、棟が落ちる茅葺きも出現したそうです。
一方で、北村の素朴な風景を映そうと、カメラマンや絵描きが多く訪れ、それによって住民も北村の魅力を再確認していったということ。
そして、なんとか村を甦らせようと、雑穀の餅の生産販売や里芋の協同栽培など地道な取り組みをはじめ、行政(旧美山町)からも積極的な働きかけを受けて伝統的建造物群保存地区指定を目指したそうです。
行政の後押しを受けながら町おこしを進める中で、中野さんが一番お気に入りだったのは「目指せ日本一の田舎づくり」というキャッチフレーズ。
店屋はほとんどなく、建物もただの農家住宅。けれど、それがウリ。あるものを第一に自らの手で地域を守っていこうという町民意識、連帯感が醸成されたといいます。
こちらの写真は地域新聞「ふるさと」(縮刷版)

町民の啓発、親睦を図るために、手書きで北村の出来事や住人のインタビュー、写真など30年の長きにわたって北村の「今」を記録しているそうです。
素晴らしい努力ですね!icon12
こうした地道な活動が実って、北村地区は平成5年12月に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定。
中山さんは、茅葺き所有者だけでなく、トタン葺きの住人も含め全員の同意を得たことが最大のポイントだとおっしゃっていました。当時は全国初のことで、これにより、住民間の不公平がなくなり、後の活動がとてもやりやすくなったそうです。

その後、保存優先の基本理念、精神的な心がまえを「北村かやぶきの里憲章」という形で制定し、全額住民出資の合同会社も設立。特産品の開発や生産、直売などにより、雇用も創出されているとのこと。
短時間の講演だったので、お話の内容は活動のほんの一端だったかと思いますが、戸隠宝光社・中社地区のまちづくりにあてはめてもとても参考になり、有意義でした。

さて、もうひとつご紹介するのは戸隠の観光や農業に携わる若手有志を中心とする「戸隠未来会議」。
一時の戸隠ブームが去り、観光客とともに人口も右肩下がりの戸隠において、10年、50年後の子どもたちに何を残していくのか、ビジョンを描き、それに向けて進んでいくためのワークショップ型会議です。
2回目となった今回は、戸隠に熱い想いのある長野市の観光振興課の担当者も含め、20数名が集まりました。
参加者が4チームに分かれ、戸隠のよい点、悪い点を洗い出し、カテゴライズして模造紙にまとめていきます。

ふだん思っていてもなかなか言う機会がないようなことも、この場では自由に発言でき、会話をしながらの作業は、とても面白く、ついつい時間が経つのを忘れそうでした。
その後、まとめた内容をグループごとに発表します。

浮き上がった課題の優先順位をつけ、その解決のために何をしていけばよいのかを考えていきます。

年齢、職業、立場は違えど、戸隠の自然と文化を愛する戸隠人たち。
50年後の子どもたちの笑顔のために、どんなビジョンを持って進んでいくのか、乞うご期待!




  


Posted by toga at 06:48Comments(2)戸隠人

2015年01月30日

キュレーターが読み解く戸隠の魅力


こんにちは。昨日(1/29)の戸隠は氷点下15度ぐらいまで下がり、今シーズン一番の冷え込みでした。
前回、雪はもういらないと愚痴を書いたら大神様に聞こえのか、以来、パタッと雪が降らなくなり、あんき(=気楽という意味の戸隠ことば)に過ごせた一週間でした。
今日からまた数日、雪がつづくようですがicon04

さて、昨日は観光協会の事務局がある長野市戸隠支所の職場研修会に参加しました。
講師はこのブログでもおなじみ戸隠地質化石博物館の田辺智隆先生。

「戸隠の魅力を再発見しようー祝!妙高・戸隠連山国立公園の発足ー」というタイトルの講義でした。
そう、先週、メディアでも報道されましたが、今まで上信越高原国立公園だった妙高・戸隠を含む西部エリアの39,772ヘクタールが、新しい国立公園として制定される運びになり、その名称を「妙高戸隠連山国立公園」とすることで中央審議会から環境相に答申されたということです。正式な告示は3月ですが、地元では新国立公園の誕生を喜ぶ声が多く聞かれます。

田辺先生は、学芸員として当時の戸隠村に来て以来27年間、地域を調べ、その魅力を読み解き、伝えることに尽力されています。
専門は地質学、古生物学ですが、動植物についても造詣が深く、興味深いお話がたくさん聴けました。
たとえば......戸隠の固有種に「トガクシショウマ(トガクシソウ)」という花があります。明治時代に戸隠山で発見され、日本人が初めて名前を付けた花というのは有名ですが、大正時代にこの花を宝光社の富岡旅館の息子(富岡朝太)さんが大正天皇へ献上し、たいそう喜ばれ、皇居に植えられたというエピソードは初めて知りましたicon12

戸隠連峰の歴史については、明治時代から遡り、太古の昔、500万年前へ。
約500万年前には海底だった場所が、200万年前から徐々に隆起し、現在は2,000M級の山脈になっているのです。
平均すると1万年で10M、千年で1M、1年で1mm!
成層火山ではなく、500万年前の海底が隆起した山としては日本一高い山が、戸隠連峰ということです。icon14隆起した後に、侵食され、固い部分だけが残り、柔らかい部分は削られて凹みになり、その凹みが修行僧の洞窟として利用されたのですね。

戸隠山の山腹からは、貝の化石やサメの歯の化石が見つかっている、この日本でも稀に見る山が、ますます魅力的に思えてきましたface05
これに対し、飯縄山は成層火山(古火山で今は噴火口もない)で、戸隠スキー場のゲレンデがある怪無山、瑪瑙山とつながる大きな山腹を持つ山だったそうです。火山は水を貯えやすい地質で、戸隠は水に恵まれていたということ。そのため、人々が住みつき、米づくりができない場所であっても狩猟採集をしながら、自然を生かした知恵で生き抜いて来た場所であるということも解説していただきました。


田辺先生は「地域の素材を総合的に学ぶということは、そこで生きる意味を考えること」だとおっしゃいます。
戸隠の子どもたちに、自分の生まれた土地に誇りを持ってもらえるよう、親として勉強することがいっぱいあると、仕事を忘れて聴き入ってしまいましたface01

ここにご紹介しきれなかった田辺先生の名調子をお聴ききになりたい方は、ぜひ戸隠地質化石博物館へお出かけください。
また、3月1日(日)には毎年恒例、戸隠を知る会主催の雪上自然観察会が行われ、博物館の学芸員さんたちと冬の間しか見られない絶景と生き物の営みを体感することができます。
多勢の皆さまのご参加、お待ちしております!



  


Posted by toga at 10:57Comments(0)歴史と伝説戸隠人

2014年09月09日

戸隠旬ウォークレポート4・戸隠古道一之鳥居〜宝光社


こんにちは。昨夜は中秋の名月でしたね。戸隠ではよく晴れて、月灯りの下でお団子をいただくことができましたicon12
ただ、朝晩ぐんと気温が下がるようになりましたので、お出かけの際の服装にはどうぞお気をつけください(という私も風邪をひきましたicon11

さて、今回は9月5日(金)に行われた「第4回戸隠旬ウォーク」のご報告です。
当日は小雨模様でしたが、お申込いただいた21名の皆さま全員が、一之鳥居苑地駐車場に集合しました!
ガイドは戸隠小舎のご主人でプロスキーヤーの佐々木常念さんと、戸隠牧場で引き馬などもしている村田幸恵さん。
お二人とも戸隠生まれ、戸隠育ちの、ベテランガイドさんです。

準備体操の後、集合写真を撮って、元気に出発です!

人数が多いので、2チームに分かれて歩きます。
私は村田さんチームにお邪魔しました。
一之鳥居苑地からカラマツとアカマツ林を抜け、約5分で戸隠神社一之鳥居跡へ。

戸隠神社の元神領(千石)の入口として、18世紀末に大規模な石の鳥居が建造されましたが、弘化4年(1847)の「善光寺地震」で倒れ、今はその一部が残っています。
その後、明治時代に、奥社から運んだ大木で木造の鳥居が建てられましたが、老朽化して昭和60年(1985)に取り壊されたそうです。
鳥居建設の奉行を努めた中社の極意家(宿坊極意)には大木を乗せて曳いた大ぞりが残り、石の鳥居柱の一部も残っていると、ガイドさんから詳しい説明がありました。
また、この場所には『戸隠古道拓本集印帳』の最初のポイントがあり、拓本をとる参加者もいました。

今回、地元から参加してくださったフランススキー学校の小林校長先生からは、
「おれがこどもの頃にはこの辺に売店が立ってた」という貴重なエピソードもきかれ、往時に思いを馳せることができました。

一之鳥居付近は、最近数少なくなったマツムシソウの群生地でもあります。

神領に入ったとたん、ぽつぽつと雨に出迎えられたご一行。傘をさしながら古道を歩きます。
一之鳥居から奥社までの道標となる丁石(ちょういし)の、はじめの「一丁」。

ちなみに、一丁(町)は約109メートル。宝光社までが43丁(4.7km)、中社までは53丁(5.8km)、中社から奥社までが36丁(4km)です。

一之鳥居から七丁で大久保に到着。
大久保の茶屋の裏山に咲いているこのお花は、フシグロセンノウ。ビビットカラーなので、一見園芸種のように見えますが、在来の山野草だということを、ガイドさんの説明で初めて知りました。

ここは善光寺からの戸隠表参道と、柏原(信濃町)からの戸隠下道が合流する交通の要所。江戸時代にも二軒の茶屋がありましたが、当時は蕎麦ではなく、「力餅」が名物だったそうです。

「こちらへどうぞ」とガイドさんが案内してくれたのは、大久保西の茶屋の主屋の背後にある岩屋。

岩と岩の間に「龍のしっぽ」と呼ばれる穴があり、一説によると戸隠山の九頭龍権現がこの穴を出入りしていたということ。
「岩戸里宮」として、九頭龍権現を祀っているそうです。
私有地なので、参拝される方は、大久保西の茶屋さんに一声かけてお入りください。

九頭龍権現様にご挨拶したところで、効果覿面!?雨がザーザー降ってきましたicon03
晴れていれば野鳥や虫の声が聞こえ、山野草も楽しみな遊歩道ですが、傘をさしながら早足で進みました。
祓沢のそば展望苑に到着。

戸隠連峰は霧にかすんでいましたが、一面に広がるそば畑を初めて見たという方は、
「晴れたときにまた来たい」といいながら写真を撮っていました。
祓沢にはその名のとおり、戸隠信仰の修験者達が禊ぎをしたといわれる沢があります。中院道と宝光院道の分岐点を示す道標がありますが、上部には大きくえぐられた跡が。明治の廃仏毀釈で梵字が削られたということです。

「左宝光(院)御宮迄十二丁 
徒夫中(院)御宮江通ぬけ」( )は削られています。


祓沢から先は石畳が敷かれ、戸隠の古き佳き時代の面影が残る古道です。
雨脚が強いので、もうひとつのビューポイント・湯之嶺夕陽展望苑はパス。晴れていれば戸隠連峰と北アルプスのパノラマを展望できるので、ぜひまた歩いてみてくださいね。
森の中の道を抜け、舗装路との合流点の先に「熊の石塔」が現れました。

大きな石を組み合わせた五輪塔。熊野信仰の跡だと伝えられています。
熊野古道を歩いたことがあるという参加者の方の話を興味深くききながら、宝光社を目指します。

ひとりでは心細いような鬱蒼とした杉木立の道ですが、「皆で歩けばこわくない」!
ギンリョウソウ(銀嶺草)が見事な白い顔を出していました。


雨にも負けず、いろいろな話をしてくれるガイドさん。
こちらの白樺の幹が黒くなっているのは....?

信州では「カンバ」でお盆の迎え火を焚きますが、戸隠では白樺の樹皮を使います。
白樺の樹皮は一度剥がすと再生せずに黒く残ります。幹が黒くなっている白樺があれば、そこは人が入った山という印だということです。

お昼を少し過ぎた頃、戸隠神社宝光社の鳥居に到着!

コケや緑が雨に濡れて一層濃く見え、晴れの日とは違った趣でした。

274段あるという石段をゆっくり上っての宝光社参拝は、なんだかとてもご利益がありそうです。

ガイドさんから来年は戸隠神社の式年大祭で、この宝光社の御祭神が御神輿に乗って渡御し、中社の御祭神とご対面するという説明がありました。
「渡御の儀」は平成27年の5月6日。楽しみですね!

参拝を終えて、お腹も空いてきた頃、武井旅館に到着。
雨の中の散策、皆さまお疲れさまでした!

築約300年の宿坊のお座敷でいただく女将さん特製の手打そば。

旬野菜の天麩羅や、煮物もとてもおいしく、雨に濡れた体が一気に癒されましたicon06
その後、女将さんから家宝の秘仏のお話、茅葺き屋根の葺き替えのお話など、ここでしか聴けない興味深いお話も伺うことができました。

現在、歴史まちづくり法の町並み整備事業が行われている戸隠宝光社・中社地区。
今年、長野市の景観風致建築物にも指定された武井旅館では、茅葺き屋根の葺き替え工事の真っ最中。
お隣、鬼無里と信濃町からの熟練の茅葺き職人の方が来て、7月から工事が始まり、今秋は西側の屋根を葺き替えるそうです。

こちらは、武井家の新たなお宝。

戸隠山の稜線等に咲く希少な高山植物「羽蝶蘭」で、宝光社には咲くはずのないこの花が、なんと、古い屋根の上に咲いていたそうです。
女将さんは、風に運ばれて根付いた貴重な一株を大事に育てたいとおっしゃっていました。

九頭龍権現様の歓待にあった今回のウォーキング。皮肉なことに食事が終わった頃には雨が上がりましたicon01
次回の戸隠旬ウォークは10月24日(金)。鬼女紅葉伝説が伝わる柵地区荒倉山塊を歩きます。乞う晴天!



  


2014年08月04日

戸隠で気功入門


こんにちは、雷鳴とともに8月がスタートした戸隠です。宝光社の観光案内所は朝から五社参拝や鏡池へ向うお客さまが絶えません。
お盆を過ぎれば、高原の風は秋の気配に入れ替わります。数えるばかりの短い夏を、充分に楽しみたいものです。
さて、今回は「森の気功教室」のご紹介。今回も鏡池が舞台ですが、この季節は何度でも訪れて深呼吸したいスポットです。

鏡池のほとりのドングリハウス2階で、気功の基礎を教えているのは、戸隠在住10年のフランス人、シルビー・ジャコさん。長く信濃毎日新聞の特約ライターとして活躍し、現在は戸隠観光協会のアドバイザーであります。

気功について何の知識もなく、飛び込んだ私ですが、シルビーさんのアドバイスを受けながら、見よう見まねで体を動かしました。
まずは、準備体操的な動きから。

自分の手足をなでて「自分に触れる」ことや、
体の周りの悪い気を蹴っ飛ばし、自分の中のストレスも外に出す動きなどはわかりやすく、誰にでもできます。

基本姿勢は肩幅に足を開き、下腹部にある丹田(たんでん)に意識を集中し、少しお尻を突き出すような立ち方。この丹田に気を入れ、呼吸することが基本となります。その際、呼吸は軽く口を開けて行います。ヨガを長く続けている私は、どうしても鼻呼吸になってしまい、まず、口の緊張を解くことに気を使ってしまいました。


室内で30分ほどウォーミングアップをした後は、どんぐりハウス横の東屋の前で「ソラ気功」(勝手にネーミング)です。このときも、ほとんど見よう見まねの私。
はたから見れば滑稽でしかない動きだったと思いますが、大地の気を感じながら立ち、太陽や大気の気を体に取り込むための気功の動きは、とても気持ちよかったです。

ちなみに、大地の気を体に取り込む際は、足の湧泉(足底の中心より前方、第二第三指の骨の間にある)を意識して立つこと、
太陽の気を取り入れる際には、手のひらの労宮(第二・第三指の間、拳を握って中指があたる辺り)を意識するそうです。

視界には雄大な戸隠連峰と見渡す限りの森、鳥のさえずり、セミの声。鏡池の周りの緑の色が、雲間から差す陽の光で、七変化する様子が美しく、太陽の気、大地の気をたっぷりと感じることができました。

ツボや経絡についての知識も深いシルビーさん。
そもそも東洋の思想に興味があり、15年ぐらい前からセミナーなどに通い、気功を行うようになったそう。グリーンシーズンには自宅近くの一之鳥居苑地等で行うが多いそうですが、今年からはより多くの人に気功を紹介したいと、鏡池で教室を開くことにしたそうです。

シルビーさん曰く、気功のステップは3段階あります。
まずは「気を増やす」こと。自分を知るということが前提です。
その次に「気を集める」こと。
そして、最終段階として「自分を癒す、人を癒す」ということです。

丸く円を描く動きに意味があるのか、と尋ねると「人間はまるいでしょ。かくかくしていると動きもかたくなっちゃうからよ」とにっこり。その笑顔に癒されました。

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Posted by toga at 13:57Comments(0)戸隠人アウトドア

2014年07月18日

続・戸隠の手しごと。


こんにちは。戸隠観光案内所のある宝光社地区は、標高1100m。土用間近とはいえ、市街地に比べ過ごしやすい気温と湿度を保っています。
さて、今回は続・戸隠の手しごと。戸隠の根曲がり竹細工については昨年1月のブログ「戸隠の手しごと」で少しご紹介しましたが、中社の井上竹細工店の三代目・井上栄一さんの作品展がお隣小川村で行われているということで、山を越えて出かけて参りました。

会場はふるさとランド小川(小川村郷土歴史館)。
移築復元された旧長野県知事公舎の隣にギャラリーがあります(写真右奥)。

小川村は長野県内で7町村が加盟する「日本で最も美しい村」連合の一村。戸隠から鬼無里を抜けて小川村の中心部へ来る道中も、北アルプスのビューポイントや高山寺の三重塔、美しい田園風景を見ることができました。最近は都市部から移住する若い人達が増えているとか。戸隠でも見習うべき点がありそうですが、それはまた別の機会に。

スリッパに履き替えて、「手仕事展」へ。

戸隠の根曲竹細工は長野県の伝統工芸品に指定される「信州竹細工」のひとつ。戸隠に自生する根曲がり竹を切り出し、細かく切り、編み込んで作品を仕上げるまでひとりの職人が一貫して行います。
今回は、小川村教育委員会の企画でそんな「手仕事」の温かみが伝わる井上さんの作品60点程が展示販売されています。

中社の竹細工師の三代目として生まれた井上栄一さんは今年還暦。
サラリーマン時代を経て、30年程前から竹細工を始められました。山が好きでフットワークが軽い井上さんは、戸隠地区山岳遭難対策協議会の山岳レスキュー隊員としても活躍されています。

この日、井上さんがお上手だと評判のそばざるはすでに売り切れていましたが、茶盆かご、カバンかご、とうじかごなど籠を中心とした作品が並んでいました。




30年の経験がある井上さんでも、まだまだ修業中だとおっしゃいます。
得手不得手なく何でも作れるように努力しているということです。
最近は、山葡萄細工にも力を入れていらっしゃるとか。

こちらはランプシェード。お部屋がぐっとお洒落な空間になりますね。


こちらは、石鹸かごと言われる小振りのかご。おしぼり置きにしても素敵ですね。


壁には浴衣(竹柄)やうちわ、机上には反物やグリーンが置かれ、涼しげな演出がされていた会場。籠にドライフラワーを飾ったりと、インテリアの勉強にもなる素敵な展示会でした。


ご神体である山から切り出し、全行程を手作業で行う竹細工。そばざるは1日2枚ぐらいしかできません。当然価格も安くはありません(そばざる3,000円前後)。ですが、戸隠の根曲竹は頑丈なので大事に使えば20年、30年と長持ちします。

このポーチ(非売品)は井上さんが20年程前に、古い竹を使って作ったもの。経年変化で竹が飴色になっていて、とてもいい風合いですね。

薄利多売の時代の流れから、戸隠の土産物店でも戸隠以外で作られたものや、外国産のものが売られていることもあります。

山深い戸隠に代々継がれてきた根曲竹細工。
伝統工芸は一度失われてしまえば、再興することは難しく、廃れてしまいます。私たちは後世に何を残していくのか。何を捨てるのか。
竹細工職人の数が数える程になり、存続が危ぶまれている戸隠竹細工。戸隠そばを食べることも、間接的な応援になりますね。

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Posted by toga at 16:30Comments(0)文化戸隠人

2014年06月20日

戸隠旬ウォーク・新緑の池めぐりレポート


こんにちは。梅雨の前半戦はまとまった雨量がない戸隠。お百姓さんたちは空を見上げては畑に出る忙しい時期です。
さて、今回は6月13日(金)に行われた第2回戸隠旬ウォークのレポート。
前日は夜まで荒れ模様で開催も危ぶまれましたが、集まった14名のお客さまが晴れ男・晴れ女のだったのか、無事開催となりました。
本日のガイドは山の庭 タンネの二代目・里野晋吾さん。越水生まれ越水育ち、あるときは料理人、あるときは山岳レスキュー隊員、さわやかな笑顔が印象的なジェントルマンです。

戸隠キャンプ場ウェルカムハウスで顔合わせをし、タンネ特製のお弁当を各自リュックに詰め込み、出発です!

キャンプ場入口南側の駐車場から、念仏池へ。

その昔、高妻山を登った親鸞上人が発見し、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と念仏を唱えるとこれに応えるように池底の砂が噴き上がり、声を低くすれば勢いが弱まることからその名を付けられたという念仏池。
夏が近づくにつれ藻が増えていきますが、非常に透明度が高く、冷たい湧水です。
「みなさんでジャンプしてみましょう」ということで、里野さんの発声で14名+スタッフ3名がドシーン!

池の底から噴き上がる水に、皆さんから感嘆の声が上がりました。
念仏池を後に、一行は県道36号線に沿って種池を目指します。戸隠牧場を通って山側から入るコースも検討していましたが、前夜の雨で足下が悪いということでコース変更。それにしても雨上がりの緑は、一層鮮やかさを増し、目の保養になります。耳にはエゾハルゼミの声がシャワーのように降り注ぎます。

ゆっくり15分ほど歩いて市町村境界の大橋に到着。ここから先は上水内郡信濃町になります。ここから大橋林道を経由した黒姫山登山道(新道)があります。

さらに3分ほどで黒姫西登山道入口に到着。

足下は多少ぬかるんでいますが、登山道はしっかり刈り払いされていて、歩きやすくなっていました。

この道を通るのは一昨年12月の雪乞い祭りのお水取り以来2回目でしたが、雪も寒さもなく、新緑の山を歩くのは本当に清々しいです♪

15分ほどで種池の畔に到着。里野さんから取水口も出口もないのに枯れない池であり、古来この池の水を汲んで雨乞いの神事が行われて来たことが説明されました。種池の主といわれるのが「一かん龍王」で、戸隠神社奥社参道の入口にこの龍王を祀った祠があります。ちなみに毎年6月中旬の巳の日に種池祭が行われ、種池と奥社の祠で祝詞があげられますが、今年は6月16日に行われました。


皆さんが盛んにレンズを向けているのは....?

モリアオガエルの卵が入っている泡巣でしたface08よく見るとかなり高い所の枝にも泡が付いていてビックリ!
既にオタマジャクシもたくさん泳いでいました。

種池は「生態系の豊かさ」を感じる場所でした。たくさんの動植物が共生しているエネルギーに満ちた池です。
丸っこい葉っぱで白い花が咲くヤブデマリ。

お茶で生菓子をいただく時に使うクロモジの若木。


皆さん思い思いに写真撮影を楽しんだり、水分補給をした後、次なる目的地「古池」へ向います。

笹が繁茂する道ですが、よく見ると、小さな花を咲かせた草があります。

ズダヤクシュ。「喘息薬種」と書き、読んで字の如く種子が喘息に効くことからこの名が付いたそうです。
10分ほど歩くと古池に到着!

穏やかな黒姫山と静かな池を前に、「うわ〜きれいー」、「いいところだねー」と皆さんから感嘆の声が上がりました。
古池は農業用のため池として作られた人口池、この辺りも戸隠高原と同様、鉄分が多く含まれる土壌で、水門付近には赤い錆が見られました。

古池の周囲は木道が整備されていて、気持ちよく歩くことができます。

池の西側にある湿地にはミズバショウの群落がありました。残念ながら木道が傷んでいて奥まで入れませんでしたが、アヤメも群生していて、とても眺めのいいところでした。やはりミズバショウの見頃も戸隠より1週間程遅いそうなので、戸隠で見逃した方はどうぞこちらへicon14

ジブリ映画に出て来そうな祠。何をお祀りしているのでしょうか?


木道の両脇には多様な花が咲き、お花が好きな参加者の方は、感激して立ち止まってはパシャリ(私もそのひとり)。
ベニバナイチヤクソウの群落。

レンゲツツジ。戸隠では見頃を過ぎましたが、古池では1週間程遅く見頃になるようです。

ユリ科のナルコユリ(中央の1本立っている茎)。7月頃鳴子のような花を咲かせます。

そして、今回のツアーの目玉でもあったミツガシワの群生地。

例年6月中旬が見頃となるミツガシワですが、今年は開花が1週間程早く、白い花は既に落ち、実だけになっていました。残念icon10

落ち葉の中からニョキっと顔を出しているのはギンリョウソウ。葉緑素はなく、根から養分を摂る腐性植物です。


花を楽しみながら古池を一周して戻ってくると、水面を一列になって泳ぐカルガモの親子に遭遇。意外とスピーディーなので写真では撮れませんでしたが、とても癒される光景でしたicon12
池の畔の芝生の上でランチタイム♪雨雲の動きが活発で不安定な空模様でしたが、お弁当を広げる頃には運良く青空も出てきましたicon01
本日のガイド里野さん自らが作った山菜たっぷりヘルシー弁当!

ウドとシラスのきんぴらに、フキの煮物、メインはノアザミの牛肉巻き。山菜には出汁がよくしみ込んでいて苦みは少なく、とても食べやすく、皆さん「おいしい」といいながら食べていましたface02

静かでゆっくりと時間が流れる古池で、優雅なランチタイムを堪能したところで帰路につきました。
往路も行きと同じ道なのでとても早く感じましたが、足はいい具合に疲れ、普段運動不足の方にとってはよい運動になったようです。

13時半過ぎに戸隠キャンプ場入口に到着。皆さま怪我もなく、楽しんでいただけたようです。
次回は7/25(金)鏡池と不動尊磨崖岩を巡る涼感ウォーキング。戸隠の知られざるパワースポットを訪ねます!
ご興味のある方はぜひお申し込みください。

  


2014年05月13日

「戸隠旬ウォーク」レポート


こんにちは。たくさんのお客さまがお見えになったGWが過ぎ、これから1ヶ月ほど、新緑が素晴らしい時期を迎える戸隠です。
観光協会の事務局から見える飯縄山の山裾にも新緑が見えるようになりました。この時期の緑のグラデーションには本当に目が奪われ、心癒される彩りです。
さて、今回は5月8日(金)に行われた「第1回戸隠旬ウォーク〜ミズバショウと野鳥のさえずりを楽しむ春の息吹ウォーキング」にスタッフとして参加しましたので、写真とともにご紹介します。

今年からスタートしたウォーキングイベント。「観光コース」ではなく、旬の草花や知られざる絶景をゆっくり歩きながら楽しんでいただきたいと、戸隠の自然を熟知し、ガイド経験も豊富な戸隠登山ガイド組合のガイドの案内で歩くコース設定。初回にも関わらず、県外の方を含む10名のお客さまにご参加いただきました。
この日のガイドは、民宿鳥見亭のご主人、バードウォッチング歴20年以上の吉井一夫さん。
自称「てるてる坊主」とおっしゃる晴れ男。雲が多めではありますがまずまずのお天気に恵まれました。
戸隠森林植物園森のまなびや前を出発し、手始めはみどりが池に泳いでいた水鳥の説明。「小さいカモなので"コガモ"です!」

バリアフリー木道を奥社方面へ。
園内にはたくさんの鳥の巣箱がかけられていますが、鳥のサイズによって穴の大きさが違っているそう。知らなかった!

木の根本に注目!冬の間に雪に埋まっていた部分がネズミ等に皮を齧られてしまっています。こうなると、木は死んでしまうそうです。恐るべき害チュウ...

吉井さんが双眼鏡で何やら見上げています。
♪ピリピリリ..
「サンショウクイという鳥です。山椒は小粒でピリリと辛いと言う訳ですface02
素人には鳥の姿こそ見えませんでしたが、その鳥のさえずりとネーミングの妙が心に残りました!

10分程歩いて入口広場へ出ました。
カタクリ、ヤマエンゴサクの共演。

案内板の脇から再び木道を歩きます。右側に水芭蕉の群生が広がり、おとぎ話のような光景がicon12参加者の皆さんはカメラをパシャパシャ。

水芭蕉の間をチョンチョンと歩くアカハラにも出会いました(残念ながら写真は撮れず)。

「しばらくここでぼーっとしていたいわ」という声も聞かれましたが、今回はウォーキングなので、どんどん行きます。

近くには二輪草も咲き始めていました。二輪草は風味がよく、味噌汁に入れたりもするそうですが、葉っぱがトリカブトと酷似しているので要注意ですface08

こちらは富貴草(フッキソウ)。名前がおめでたいので、雑草を防ぐため畑や庭に植える人もいるとか。

行者ニンニクも群生。戸隠森林植物園は国立公園なので、採集はできませんが、お好きな方にはたまらないですね。

木道を離れ、小鳥のこみちへ。杉等の常緑樹も混じる林の中です。
スミレサイシン。川端康成の「牧歌」という随筆にも登場する少し大きなスミレ。低地ではあまり見られない貴重な種です。

そして、キクザキイチゲ。ほのかな紫色がとても上品です。

こちらはカンバの仲間の大木。倒れた幹から樹が生え、こんな形になっています。
昔の人が薪をとるため雪上に出ている部分を切り、切り株から新たな芽が出て成長した樹=「アガリコ」も、戸隠の森の中にはたくさん見られます。

一行は外周の小径へ。

針葉樹の森を抜け、明るくなった林の上で耳を澄ませると「フィーチーチー」という声。
声の主はクロジ。「アカジではないですよ。アオジという鳥はいますが、鳥にアカジはないんです」と吉井さんの明解説が入ります。
ミズバショウの群生地でもあり、ツキノワグマの餌場でもある植物園。クマの通った笹薮やイノシシが土を掘り起こした跡など、野生を感じる道を10分ほど歩きますと、パッと視界が開け、こんな景色が。正体不明の女人の像(向かい合って2体あります)。

小川に架かる橋を渡ると小さなお社が現れました。

天命稲荷です。戸隠最後の修験者と言われる姫野光明師が建立し、伊勢の下宮の御祭神・豊受大神を祀っています。
一節によると、戦国時代にこの地は首塚であり、その生霊を鎮めるためにお社を建てたとか...。

せせらぎに沿って5分程歩くと鏡池が見えて来ました。

鏡池前に到着!戸隠連峰の西岳がくっきり見えて、大山桜も見頃。素晴らしい景色に皆さんから歓声が上がりましたicon12
ここまで終始平坦な道をゆっくり歩いて1時間15分程。皆さま思い思いに写真を撮ったり、15分の休憩を楽しみました。

帰りは天命稲荷から東へ向う林道を歩きました。
冷たい風が吹き始め、雲行きが怪しくなって来ました。ミズバショウが咲く林の向こうに戸隠山が見える場所を発見!

若干の上り坂で、笹薮が続く単調と思われる道にも、吉井さんの絶妙のガイドが。

戸隠の伝統工芸竹細工に使われるチシマザサ。棹が弓上に曲がっていることから戸隠では「根曲がり竹」と呼ばれ、竹細工の貴重な材料となるため、採取は禁じられています。

一方こちらはクマザサ。熊ではなく隈笹で、冬になると葉が隈取りされたようになります。葉の裏に毛が生えています。

高台園地の下の小高い丘に到着、ゴジュウカラやキビタキのさえずりをききながら、みどりが池まで下っていきました。

ミズバショウとリュウキンカが池をきれいに彩っていました。
集合場所の八十二森のまなびや前に到着したところでぽつぽつと雨が降って来ました。
奇跡的なタイミング。これも「てるてる坊主」の吉井さんのお力でしょうかicon01icon03
参加者の皆さんからは「ミズバショウがこんなに綺麗だとは知らなかった」
「また次回も参加したい」等嬉しい感想をいただき、何よりも無事開催できたことにほっと安堵して解散しました。

次回は6月13日(金)ミツガシワの群生と出会う池めぐりウォークです。
多勢の皆さまのご参加お待ちしております!



  


Posted by toga at 09:49Comments(2)イベント戸隠人

2014年01月08日

戸隠で「おら家の逸品」を味わう(2)


遅ればせながら、明けましておめでとうございます。寒い日が続きますが、本年もホットでディープな戸隠の情報を発信して参ります。
どうぞよろしくお願い致します。
さて、七草粥もいただいて、お正月ぼけをリセットしたところで、まっているのは三連休icon14ということで、これからが食べ頃の冬のグルメ特集「おら家(おらっち)の逸品」の続編です。
今回は、越水高原で昨年創業30周年を迎えたカフェレストラン「パイプのけむり」にお邪魔しました。

靴やブーツを脱いで、内扉を開けると、ジュータン敷きの店内にはテーブル席が12席、カウンターに6席。オーナーの高木進一さんが優しい笑顔で迎えてくださいました。

このお店の「逸品」はビーフシチューセット(はるにれ)。
お料理が運ばれてくるまでの間、オーナーにお話を伺いました。
窓辺には団伊玖磨の名エッセイ「パイプのけむり」が置かれていましたので、
店名は本のタイトルから?と伺ってみると、「直接はそうではないのです」
ヒントは学生時代の旅の経験から得たそうで、パイプは上昇するシンボルであり、パイプをくゆらすようにゆっくり、ゆったりとした時間を少しでも過ごしてほしいという思いから。


日本各地や近隣諸国を寝袋とバックパックだけで旅したという高木さん。
旅をつづける中で、キャラバンシューズを脱いで素足になったときの解放感がなんとも心地よかったことから、自分のお店では、靴を脱ぎ、直に上がってもらうスタイルにこだわったそうです。スリッパもないので、まれに冬など「靴を脱ぐのぉ~?」と帰って行くお客さんもいるとか!?
興味深い裏話はこの辺にして、お料理の紹介を。

まずは前菜「自家製ベーコンのソテー」をいただきましょう。

オーナー手作りのベーコンは、柔らかく、程よい脂と塩加減で、滋味深いおいしさ。
燻製は遊びで始めたというオーナー。商品になるまでは試行錯誤を重ね、桜とミズナラを混ぜたチップを使っているそうです。
ベーコンの脂でソテーしたりんご、プルーンはほんのり甘く、ベーコンの付け合わせとして絶妙な役割を果たしていました!

お次は、メインディッシュのビーフシチューとクロワッサン(ライスも可)。

見た目はさらっとしたスープのようですが、口に運んでみると、クリーミーな舌触り。ソースに溶けた野菜の甘みとコクが口中に広がります。
タマネギなどの野菜は細かく刻んだオーナー手作りのベーコンと一緒によく炒め、よく煮込み、丁寧に野菜の持っている甘さを出すようにしているそうです。牛肉は脂と赤身のバランスがよい三枚肉を使用。肉の脂がとろみとなって生クリームのようなクリーミーさを感じたのではないかと、オーナー。知人に頼んで焼いてもらっているというクロワッサンは、あっさりとした食事パン風で、シチューとの相性もばっちりでした。

お腹もすっかり満たされたところですが、別腹で食後のデザートを。
まずは、ヨーグルトシャーベット。

シャリシャリの食感で、後味さっぱり!
寒い日に、温かい部屋でシャーベットをいただくなんて、最高の贅沢ですね☆

そして、締めはコーヒーとケーキ!
本日のケーキの中からおすすめの「りんごとくるみの木」を注文しました。

香ばしいくるみのコーティングの下に、ふんわり、しっとりとした食感のケーキ。りんごの甘みが感じられるやさしい味で、大きなりんご(フジ)はあえてシャキシャキ感を残しているそう。
戸隠周辺で採れたものを使ったケーキづくりはパイプのけむりの原点だとオーナーは語ります。
特に、戸隠のおいしいジャガイモを使ったケーキは、30年のロングセラーで、お店のケーキ作りの基本になっているとのこと。次回はぜひ食べてみたいと思います!

ビーフシチューは単品(1,000円)でもOKですが、前菜に、パン、デザート2品と飲み物が付いたセットは2,000円で断然お得!

また自家製カレーのセット(1,300円~)も人気だそうです。スキー場やご参拝の帰りに、おススメです。

最後に、心地よいボサノバのBGMや店内の絵について尋ねると、
BGMはアコースティックギターの第一人者佐藤正美さんのCDで、佐藤さんはパイプのけむりの常連客でもあるそう!昨年は創業30周年を祝い、「戸隠パイプのけむり」という作品を書き下ろし、ライブ演奏をしてくださったそうです。この楽譜はそのときに贈呈されたもの。


壁にかけられた水彩画は、奥さんの作品!

色彩が素晴らしく、見入ってしまいました。(トップの随神門の風景も同)

高木さんご夫妻の手づくりと笑顔に出会える「パイプのけむり」へ、ぜひお出かけださい。

  


Posted by toga at 07:46Comments(0)文化戸隠人カフェ

2013年01月22日

戸隠に育つ。


こんにちは。
戸隠どんど焼き祭りが終わり、再び静かになった戸隠。
寒さが若干和らいで霧に包まれている火曜日です。

皆さま、今シーズンはもう戸隠スキー場へお越しいただいたでしょうか?
我が家では今年、4歳の娘がリフトデビュー。
初めは父にしがみついていたものの、1回降りて来ると自信がついた様子で
2回目からはへっぴり腰ながら単独ボーゲン。
ゲレンデの寒さに弱音をはくのではという親の予想をあっさりかわし、
楽しんで滑れてよかった!
せっかく戸隠で育つなら、雪とも仲良くなってほしいですからね。

さて、今回はそんな戸隠育ちの兄妹が営むお店に行って参りました。
戸隠スキー場越水ゲレンデ入り口の空き店舗を改装し、
ご存知、戸隠そば山口屋の越水店として2011年の12月にオープン。

1階はレストランとおみやげもの屋兼スキー・スノーボードのレンタルやワックスのチューンナップができるショップ。
2階がメディアでも話題のCafe戸隠基地ートガクレベースーです。

お店を切り盛りするのは戸隠出身の山口兄妹。
兄の寿文さんは青山のイタリアンレストランで培った経験を生かし、パスタを中心に、戸隠ならではの素材を使った創作料理を考案。
カフェに欠かせないスウィーツを担当しているのは自由が丘の有名店で修行を積んだパティシエの妹さん。

「今まで戸隠になかったお店を創りたい」「スキー場に来てくれたお客さんを喜ばせたい」と、
メニューはもちろん、お店のインテリアも抜群のセンスとアイディアで担っているお二人です。
ブーツを脱いでソファに座りゆっくりまったりするには最高の空間。

子ども連れのお客さまが来店したときはスクリーンがミニシアターになるしかけ。
その間、親はゆっくり食事することができて嬉しいですね。

カフェメニューの一番人気はカフェラテ(400円)。

デザイナーの経験もある寿文さんが描く遊び心たっぷりのラテアートはブログやFacebookなどでも話題になり、これを楽しみに来店するお客さんも多いとか。
飲んでしまうのがもったいないようなかわいさですが、挽き立てのコーヒーの香りが咽をうならせます。
そして、看板メニューの山口屋オリジナルそばプリン(350円)。
口に含んだ瞬間に蕎麦の風味とやさしい甘さが広がります。

ごはんメニューの一番人気は、「忍者丼」(みそ汁・漬け物付き)1000円(ハーフサイズは600円)。戸隠産ニンニクとジンジャーで味付けした肉味噌と半熟卵がのって体の中から温まりそう。
次回のスキー場帰りにはぜひ試してみたいものです。

スキーをしなくても、雪原を眺めながらまったりしたい方、
おいしいコーヒーとスウィーツで贅沢な時間を過ごしたい方、
温かな服装と安全運転でお出かけください!  


Posted by toga at 15:29Comments(0)そばスイーツ戸隠人